体重とパワーの関係。パワーウエイトレシオとは?
体重とパワーの密接な関連
体格が大きくて体重がある人ほど、大きなパワーを出せて、小柄で細身の人の方がヒルクライムが得意ということは想像しやすいはずです。実際に、FTPが高い人ほど筋肉量が多い傾向にありパワーを出しやすいため、スプリント力に長けて、平地の巡航スピードも高めです。一方で、FTPは低くても上りは速い人もいます。ここには、体重とパワーが密接に関連しています。
※FTPとは、サイクリストの有酸素運動能力の限界値を示す数値。詳しくはこちら(「FTPよりも低いパワーを一定に保つことがロングライドのカギ!」)へ。
パワーウエイトレシオとは?
さて、FTPとは別にサイクリストのパフォーマンスを示す数値があります。パワーウエイトレシオ(PWR:Power Weight Ratio)です。これはクルマの加速性能を表す指標としても知られています。エンジン性能が高くても、ボディを含めた重量が重ければ、加速性能は劣ります。ロードバイクでも考え方は同じで、 FTPが有酸素運動能力の限界パワーであれば、パワーウエイトレシオは、加速性能や上り坂(ヒルクライム)での能力を示してくれます。
具体的に、体重の異なる2人のサイクリストを比較して見ましょう。Aさんは体重75kgあり、FTPは240Wです。一方で、細身体型のBさんの体重は60g、FTPは220Wでした。 FTPはBさんよりもAさんの方が高く、平地での純粋なスプリントや巡航能力はAさんの方が有利です。
ところが、体重の重さが加速性能に影響してくる上り坂(ヒルクライム)では、パワーウエイトレシオが重要になってきます。「FTP÷体重=パワーウエイトレシオ(W/kg)」で求めることができ、パワーウエイトレシオが高い方が、純粋な登坂性能が高いと言えます。
さて、二人のパワーウエイトレシオを比較します。FTP240WのAさんが3.2(W/kg)、FTP220WのBさんが3.6(W/kg)です。つまり、FTPでは劣るBさんのほうが、上り坂では速い傾向にあることがわかります。
同じFTPでも体重を減量するだけで パワーウエイトレシオを高めることができます。ダイエットに励むことによって、苦手な上り坂を克服することができるようになるのです。パワーウエイトレシオは、ツールドフランスを走るような世界の一流選手で、FTPの6.00~7.00倍、国内の実業団の上位レベルで5.00~6.00倍、アマチュアサイクリストで3.50倍前後と言われています。
体格(体重)によって得意なシチュエーションは変わる
パワーウエイトレシオは、あくまで上り坂での走力を示すものです。もし、ふたりのパワーウエイトレシオが同じ場合は、絶対的なFTPが高い方が、サイクリストとしての総合的なパフォーマンスレベルは高いと言えます。
ロングライドを走っていると、平地では自分よりも速いのに、上り坂になると遅れてしまう人がいるかもしれません。その逆もあるかもしれません。ペーシングの指標となるFTPだけでなく、パワーウエイトレシオを知ることで、、体格(体重)によって得意なシチュエーションが変わることを理解できるでしょう。坂道が苦手な人は、減量に取り組むことでパワーウエイトレシオを上げて、坂道の苦手克服が可能になります。
■記事執筆者:橋本謙司(はしもと・けんじ)
スポーツジャーナリスト。自転車専門誌やランニング専門誌の編集者を経て、現在は、主にライターとカメラマンとして活動。Mt.富士ヒルクライム(一般の部)での総合優勝など、全国各地のヒルクライムレースで優勝多数。愛称は「ハシケン」。ホームページ http://www.hashikenbase.com
FTPよりも低いパワーを一定に保つことがロングライドのカギ!
できるだけ長時間走り続けるためには?
パワーメーターによって測定できるペダリング時の出力、つまりパワーは、ロングライドを苦しまずに最後まで楽しむためのペーシングの指標になります。そして、パワーメーターを使用すると必ず登場するFTPとは、1時間持続可能な限界パワーを指し、その人の有酸素運動のレベルを表すパワーゾーンなのです。ロングライドでは、この有酸素運動の限界値であるFTPよりも低い運動強度で走り続けることがポイントになります。
そもそも、パワーとその持続時間は反比例の関係にあります。当然ですが、高いパワーは短時間しか持続できず、低いパワーは長時間発揮し続けることができます。できるだけ長時間走り続けるためには、自身が持続できるパワーを把握してコントロールする必要があるのです。
過去のデータから推定FTPを算出する方法
さて、FTPの求め方には、FTPテストと呼ばれるパワートレーニングの世界では有名なトレーニングテストがあります。自分の現在の有酸素運動能力の限界値を知るためのテストなので、実施には苦しさを伴います。そもそもロングライドでラクをしたい皆さんにとっては、FTPテストは避けられるならば避けたいものでしょう。
そこで、過去のライドデータの蓄積から推定FTPを算出する方法もあります。パイオニアが展開する解析ソフト「シクロスフィア」では、推定FTPがわかるためトレーニングテストを必要とせず、ロングライド志向のサイクリストにオススメのパワーメーターと言えるでしょう。
ロングライドを無理なく走れるパワーの確認方法
それでは、実際に上のグラフを見ながら、ロングライドを無理なく走れるパワーを確認しましょう。過去の走行データを蓄積した「MMPグラフ」では、時間ごとの過去の最大平均持続パワーを表示してくれます。例えば、15秒間での過去最大平均パワーは700Wです。また、5分間での過去最大平均パワーは240Wです。ロングライドで指標となる1時間(FTP)の過去最大平均パワーは200Wということがわかります。ロングライドでは200Wを超えない範囲でパワーを刻めば良いことがわかります。
なお、MMPグラフでは過去最大平均パワーと比較する形で、今回の走行パワーデータも表示します。「過去の自分を上回った!」という成長を確認することもできます。
このようにパイオニアのパワーメーター(パワーセンサー)を活用することで、パワーを指標にしたロングライド時のペース配分を知ることができるのです。
■記事執筆者:橋本謙司(はしもと・けんじ)
スポーツジャーナリスト。自転車専門誌やランニング専門誌の編集者を経て、現在は、主にライターとカメラマンとして活動。Mt.富士ヒルクライム(一般の部)での総合優勝など、全国各地のヒルクライムレースで優勝多数。愛称は「ハシケン」。ホームページ http://www.hashikenbase.com
今の自分を知れば、不安解消。モチベーションもアップ! ~パワーを意識したペース走で楽をしよう~
パワーメーターが苦しさや不安を解消してくれる
苦しまずに効率的に走って、結果として楽しく走り切るために必要なことはなんでしょう。それは、自分自身の体力の限界を超えないペース、つまりマイペースで走ることです。それがレースであってもロングライドであっても同じ。序盤で少しばかり頑張ったがために、後半にペースダウンして苦しんでしまったという経験はよくある話です。でも、パワーメーターさえあれば、この問題は解決できます。ペースコントロールをサポートしてくれるので、これまでよりも楽に長く走り続けることができるようになります。
パワーを意識したペース走で楽をしよう
このように、今回はパワーメーターを使って「今の自分を知る」ことのメリットをお話しします。まず、パワーメーターを使うことで、クランクを回したときの出力(パワー)を明らかにできます。つまり、自分自身の体力レベル(パフォーマンス)を客観的な数値としてリアルタイムに知ることができるようになります。
ロングライドやヒルクライムでスタートからゴールまでペースを落とさずに一定の強度で走り続けるためには、自分の限界を超えた強度で走らないことが大切です。この目安のパワーのことをFTPと呼びます。FTPについては、改めて詳しく解説しますが、簡単に説明すると、「1時間走り続けられる限界のパワー値」のことで、ロングライドではこの数値を超えないように走ることでイーブンペースで走れます。
短時間に出せるパワーがスプリント力である一方で、FTPはその人の持久力のベースを決める数値と言えます。そのため、しばしばFTPでライダーの体力レベルを把握します。例えば、自分のFTPが220Wだった場合、ロングライドではパワーメーターをチェックしながら220Wを超えないように走り続けましょう。このパワーを意識したペース走は、ロングライドやヒルクライムでパワーメーターを活用する最大のメリットです。
自身の成長を知ることがモチベーションになる
もう一つのメリットが、自分自身の体力レベルの成長を感じられることです。常に今の自分の体力レベルを把握しておくことで、昔と今の体力レベルを比べることができ、その成長度合いを知ることができます。これはスポーツバイクを乗り続ける大きなモチベーションになってくれます。このほかにも、すべてのサイクリストの中での自分自身のレベルを知ることもできます。ツールドフランスを走るような選手と自分自身の体力レベルを客観的に知る指標にもなります。
このようにパワーメーターは、今の自分の体力レベルを客観的な数値で知ることができます。多くの初心者が不安に思う最適なペース配分をサポートしてくれるだけでなく、スポーツバイクを楽しむ中で、自分自身の成長を感じることもできるのです。
■記事執筆者:橋本謙司(はしもと・けんじ)
スポーツジャーナリスト。自転車専門誌やランニング専門誌の編集者を経て、現在は、主にライターとカメラマンとして活動。Mt.富士ヒルクライム(一般の部)での総合優勝など、全国各地のヒルクライムレースで優勝多数。愛称は「ハシケン」。ホームページ http://www.hashikenbase.com
オーバーペースを防ぎ、休憩の目安がわかるインテンシティ ~リアルタイム・インターバル・インテンシティ~
自分の限界に対する追い込み度合いがわかる
ビギナーサイクリストが陥りやすい走りのパターンがあります。それは、カラダも気持ちも元気な序盤に頑張りすぎて、中盤以降はペースダウンして苦しい走りになってしまうというものです。実際に、これまでロングライドイベントやヒルクライムレースで体験したことがあるのではないでしょうか。筆者自身も過去にあります。
ロングライドのイメージ
この誰もが一度は経験してしまうペース配分のミスを防いでくれる指標が存在します。パワーから算出されるリアルタイム・インターバル・インテンシティ(Intensity)です(以下、インテンシティ)。インテンシティは、パイオニアのパワーメーターならではの特徴的な機能で、「自分の限界に対する追い込み度合い」をリアルタイムに表示してくれる新しい指標です。インテンシティは、限界のパワーに対して、今どれくらい頑張っているのかを示します。限界を100%としたときに、負荷レベルをパーセンテージ(%)で計算します。70%以上で辛く感じだし、身体へのダメージは大きくなっていきます。
Intensityの表示を含む画面
ロングライドでは60~70%を目安に走ろう
インテンシティをチェックすれば、ロングライドイベントの序盤は気分が高揚しているため、想像以上に頑張ってしまっていることを実感できるはずです。終盤までペースの落ち込みを防ぎ、パワー一定で走り切るペーシングが理想のロングライドでは、インテンシティが70%を超えてきたら足を緩めるか、休憩を入れるようにしましょう。しばらく休むとインテンシティは下がり、40%程度になったら再び走り始めると、その後も楽に走り続けられます。
ロングライドでの休憩イメージ
インテンシティは、パイオニアのサイクルコンピュータ画面上で「Intensity」と表示されます。表示される数値は、過去3ヶ月分のMMPデータから任意に設定した持続時間の平均最大パワーに対する割合を%(パーセント)で表したものです。たとえば、持続時間を10分で設定している場合、過去3ヶ月間に、10分間の最大パワーが250Wで、いま実施している10分間の平均パワーが190Wだとします。この時のインテンシティは76.0%になります。
Intensityの表示画面 20分
Intensityの表示画面 60分
序盤を抑えれば安定したペース配分が可能
このようにロングライドシーン、特に冷静さを失いやすい序盤では、インテンシティをチェックし、70%を目安にして抑えめに入ることで前半の飛ばし過ぎを防ぐことができるのです。
サイクルコンピュータ「SGX-CA500」では「Intensity」を表示できます。表示項目選択画面のデータカテゴリーで「パワートレーニング」、データタイプの中の「リアルタイムインターバルインテンシティ」を選択しましょう。序盤はこのインテンシティをチェックしながらオーバーペースにならないように負荷をコントロールすることで、終盤まで一定パワーをキープした安定した走りができるようになります。
Intensityの設定画面
Intensityの設定画面
パイオニアのパワーセンサーとサイクルコンピューター「SGX-CA500」
■記事執筆者:橋本謙司(はしもと・けんじ)
スポーツジャーナリスト。自転車専門誌やランニング専門誌の編集者を経て、現在は、主にライターとカメラマンとして活動。Mt.富士ヒルクライム(一般の部)での総合優勝など、全国各地のヒルクライムレースで優勝多数。愛称は「ハシケン」。ホームページ http://www.hashikenbase.com
体力の消耗レベルをTSSで把握して体調をコントロール
トレーニングストレススコアをコントロール
TSSという用語を聞いたことはありますか。パワーに関連する専門用語は数多くあって、それだけで難解ですが、そのすべてを理解する必要はありません。今回はロングライドを苦しまずに楽に走り切るために欠かせない数値のひとつ「トレーニング・ストレス・スコア(TSS)」について学びましょう。TSSは、その日のライドの頑張り度合いや疲労度合いの目安です。つまり、体力の消耗レベルをパワーから算出した数値です。ロングライドではこのTSSをチェックしながら走ることで、身体への負担をコントロールしながら走ることができるのです。
ロングライドのイメージ
休憩を挟みながらTSSの上昇を防ごう
TSSの見方を説明しましょう。1時間を限界で走ったときの運動量を100とします。時間とパワー(出力)のバランスによって変動し、短時間で高強度の運動を続けていると、あっという間にTSSは上昇します。1日中走り続けるロングライドでは、TSSが上昇してきたらペースを落としたり、途中のエイドステーションに立ち寄って適度な休憩を取り入れることで疲労による身体の大幅なダメージを防ぐことができます。
TSSの表示画面
なお、ライド後のTSSからは、その後の疲労の回復に必要な時間の目安を知ることができます。早朝から夕方まで1日中走り続けているロングライドでは、FTPよりも低い低強度のパワーで走っていても、TSSは300を超えることもあります。
ロングライドのイメージ
ライド後の疲労回復までの時間がわかる
週末に100kmを超えるロングライドを満喫した翌朝から会社に出勤し、いつも通りの仕事が始まるサラリーマンライダーにとって、疲労の管理は大切。毎回のライド時にTSSを確認することで、回復に要する時間を知ることができるので、ライド後のコンディション管理にも役立ちます。
<疲労回復までに必要な時間の目安>
- TSS 150未満 翌日には疲労が回復
- TSS150~300 翌日には疲労が残るが2日後には回復
- TSS300~450 2日後でも疲労が残る可能性あり
- TSS450超 2~3日間は疲労が残る
サイクルコンピュータ「SGX-CA500」ではTSSを表示できます。表示項目選択画面のデータカテゴリーで「パワートレーニング」を選択し、データタイプの中の「TSS」を選択しましょう。ロングライドの際にTSSをこまめにチェックしながら走り、適宜休憩を挟むなどTSSの大幅な上昇を抑えることで、体力の大幅な消耗を防ぐことができるのです。
TSSの設定画面
■記事執筆者:橋本謙司(はしもと・けんじ)
スポーツジャーナリスト。自転車専門誌やランニング専門誌の編集者を経て、現在は、主にライターとカメラマンとして活動。Mt.富士ヒルクライム(一般の部)での総合優勝など、全国各地のヒルクライムレースで優勝多数。愛称は「ハシケン」。ホームページ http://www.hashikenbase.com
地形や向かい風に影響を受けないパワー基準のペースコントロール
「スピード一定」から「パワー一定」の走り方に変えよう
前回は、自転車におけるパワーについてのおさらいと、初心者にとってのパワーとの付き合い方について紹介しました「(こちら:前回リンク)」。今回は、実際にロングライドでのペース配分(ペーシング)の機能としてのパワーメーターの活用術を紹介します。
そもそもなぜペーシングの指標にパワーが優れているのでしょうか。よくロングライドに挑戦するとき、「時速25kmを目標に走れば100km完走できる」などと、スピード(速度)を目安に考えがちです。ところが、スピードは、地形や風向きによって変化しやすいのです。
たとえば、速度32kmで平地を走行しているときのパワーが200Wだったとき、勾配が5%上がるだけで、時速32kmをキープするには500Wものパワーが必要になります(体重70kgの場合)。つまり、スピードを一定に走ろうとすると、身体にかかる負荷は大きく変動し、結果的に疲労が蓄積してしまいます。
速度一定で走った場合の平地と坂道でのパワーの違い
上り坂と同様に、向かい風のシーンでも同じ。無風条件では200Wで時速32kmをキープできても、風速2mの向かい風が吹くだけで280Wが必要になるのです。
向かい風でのパワーの違い
ロングライドでは地形や風向きの変化が頻繁に訪れるため、速度はペース配分の指標には適しているとは言えません。
一方で、ライダーがクランクに伝える力を測定しているパワーは、地形や風向きに左右されない絶対的な仕事量。そのため、パワーを一定にして走ることで身体の負荷変化を抑えることができます。このように、「パワーの一定走行」がロングライドでは適しているのです。
ロングライドのイメージ
ロングライドで超えてはいけない限界ライン「FTP」
つぎに、一定走行時に目標とすべきパワーを決めていきましょう。当然このパワーはライダーの能力によって異なります。ここで登場するのがFTPという基準値です。これは、言わばサイクリストの有酸素運動能力を把握する基準です。
低強度(有酸素)運動から高強度(無酸素)運動へと切り替わるポイントを示し、FTPを超えると急激にパフォーマンスの持続が難しくなります。そのため、長時間運動のロングライドでは、FTPよりも低い強度で走り続けることが大切なのです。
苦しいFTPテストをしなくても実力がわかる
さて、長時間ペースを維持できる強度の上限=FTPを知るためには、いわゆるパワートレーニングの世界では、1時間の全力走を行うことで正確なFTPを測定しています。ただ、そもそもロングライドなどをマイペースで楽しんでいるサイクリストにとっては、苦しいトレーニングは避けたいもの。そのようなファンライド層のサイクリストをサポートするものが、過去の走行データから推定FTPを算出してくれる機能です。パイオニアのパワーメーターにはMMPグラフという優れた機能があるのです。
MMPグラフからロングライド時のパワーがわかる
パイオニアのデータ解析Webサービス「Cyclo-Sphere(シクロスフィア)」で展開されるMMP(Mean Maximal Power)グラフからは、様々なデータが読み取れます。注目したいのが、過去のある一定期間の走行データから、時間あたりの持続可能な最大平均パワーを表示してくれる点です。たとえば、15秒間の短時間運動で出せる最大パワーが700W、5分間出し続けられるパワーが240Wという具合です。1時間を超えるロングライドでは、60分間の最大パワーを自身の限界パワーの目安にできます。この場合、200Wを超えないパワーで走ることがロングライドでバテないための目安のパワーと言えます。
MMPグラフのイメージ
なお、この1時間持続できる最大パワーが推定FTPとなり、20分間の最大パワーの95%の数値も同様です。
■記事執筆者:橋本謙司(はしもと・けんじ)
スポーツジャーナリスト。自転車専門誌やランニング専門誌の編集者を経て、現在は、主にライターとカメラマンとして活動。Mt.富士ヒルクライム(一般の部)での総合優勝など、全国各地のヒルクライムレースで優勝多数。愛称は「ハシケン」。ホームページ http://www.hashikenbase.com
パワーをチェックしながらロングライドを走り切ろう
パワーメーターをロングライドのペーサーに!
スポーツバイクに興味があれば、「パワー」という言葉を一度や二度は聞いたことがあるでしょう。ここで言うパワーとは筋力ではなく、自転車を進める時の力の大きさであることくらいは知っているかもしれません。例えるなら、クルマ(自動車)はモデルによってエンジンの馬力が違うように動力性能に違いがありますよね。これと同じように、自転車ではライダー(人間)がペダルを漕いだ時の力がパワーに当たります。今回は、最近スポーツバイクを始めたみなさんへ、パワーとその基本的な活用法を説明したいと思います。
パワーメーターの商品イメージ
運動強度の指標であるパワーをチェック
パワー(Power)とは、日本語でいう出力のことで、単位はワット(Watt)で示されます。そして、サイクリストがペダルを漕ぐ時に発生するパワーを測定する機器がパワーメーターです。わずか10年ほど前まではパワーメーターはごく一部のプロ選手のトレーニング機器にすぎませんでした。それが今では、多くのメーカーからパワーメーターが登場。まさにスマホの誕生に似て、近年のスポーツバイク界の革命児なのです。
図解・パワーの生まれる仕組み
パワーメーターの特長は、ペダルを踏み込んだ瞬間のパワーをリアルタイムに計測し、表示してくれる点。さらに、ライダーの生理学的運動能力や走りの効率性など、あらゆるパフォーマンスがわかります。パワーメーターが登場する以前は感覚でしか知ることのできなかったことを数値化できるのです。
まず初めに初心者にオススメしたいパワーメーターの活用法は、パワーを把握しながら走ることです。パワーは、ライダーの運動強度の指標です。そして、自分自身の身体能力の限界を越えないペースを守って走ることで、100kmを超えるようなロングライドでも最後まで楽しく走れるようになれます。つまり、パワーメーターをペーシングに活用するのです。
次回以降、「らくライド」では、ロングライドを楽に走るためのパワーメーターの具体的な活用方法をわかりやすく紹介していきます。
ロングライドイベントのイメージ
ロングライドイベントのイメージ
■記事執筆者:橋本謙司(はしもと・けんじ)
スポーツジャーナリスト。自転車専門誌やランニング専門誌の編集者を経て、現在は、主にライターとカメラマンとして活動。Mt.富士ヒルクライム(一般の部)での総合優勝など、全国各地のヒルクライムレースで優勝多数。愛称は「ハシケン」。ホームページ http://www.hashikenbase.com
ダイエットにパワー計を活用できる
シーズン間近でダイエットに焦る
冬の間にカラダに蓄えてしまった脂肪。体重計に乗ることも避け続け、現在の体重は不明・・・。ヒルクライムやエンデューロ、ロングライドなどのイベントシーズンが始まり、ダイエットをしないとと焦り出しているサイクリストも多いのではないでしょうか。そういう私も、ふくよかになったカラダの肉をつまんで焦っている一人です。
ロングライドのイメージ
栄養バランスを崩さず、活動量を増やす
まず、ごく一般的に知られている体重増減の仕組みは、摂取カロリーと消費カロリーの収支バランスで決まります。1日の摂取カロリーよりも消費カロリーを増やせば、運動時に体内のエネルギーを使用することになるため、身体はダイエットしていきます。
しかし、ヒトのカラダはそんなに単純なものでもありません。無理な食事制限(摂取カロリー制限)は、身体の栄養バランスを崩してしまうことがあります。ダイエットの基本は、三大栄養素と呼ばれる栄養バランスは維持しながら、全体のカロリー摂取を気持ち抑えることです。三大栄養素とは、炭水化物・脂質・タンパク質(PFC)ですね。この理想のバランスは60:25:15です。
そして、アンバランスで極端な食事制限は、消費カロリーのうちの多くを占める基礎代謝量に直接影響する筋肉量を減らすことが知られています。筋肉量が低下してしまったらパフォーマンスが低下するだけでなく、スムーズなダイエットもできなくなってしまいます。
無理なく確実にダイエットを成功させるためには、運動によって活動代謝量を増やすことが大切です。その時に役立つものが、運動時の消費カロリーを計算してくれる心拍計であり、パワー計なのです。
仕事量で正確な消費カロリーを把握
体重と心拍数から消費カロリーの推定値を算出する心拍計は、消費カロリー把握の目安になります。そして、より運動時に使われたエネルギー量を正確に把握できるアイテムがパワーメーターです。パワーとは、自転車を漕ぐ際の仕事量(単位はkj:キロジュール)のことです。運動時の熱量を示すため、消費したエネルギーの絶対的な数値なのです。パワーメーターでは、運動エネルギー(消費エネルギー)は、kj(キロジュール)で表示されますが、これはkcal(カロリー)と同様と考えれば問題ありません。サイクルコンピューターの表示画面で「400kj」と表示されたら、「400kcal」消費したのだと思えば良いのです。およそ、おにぎり2個分ですね。
パワーメーターのkj表示画面
このようにダイエット時の指標に活用することで、本格的なトレーニング機材として知られるパワーメーターもスポーツバイクを楽しんで乗っているサイクリストの計画的なダイエットをサポート機材になるのです。
■記事執筆者:橋本謙司(はしもと・けんじ)
スポーツジャーナリスト。自転車専門誌やランニング専門誌の編集者を経て、現在は、主にライターとカメラマンとして活動。Mt.富士ヒルクライム(一般の部)での総合優勝など、全国各地のヒルクライムレースで優勝多数。愛称は「ハシケン」。ホームページ http://www.hashikenbase.com
ロングライド時のペースをナビゲーション
距離への挑戦
ロードバイクの魅力は、どこまでも走っていけそうなスピード感。これまでの運動経験はゼロ、体力に自身のない中年サイクリストであっても、どこか希望の光が差し込んだような気持ちになり、その世界にハマっています。
そんなスポーツバイク初心者の皆さんが、まずチャレンジしたくなるのが、距離への挑戦でしょう。初めは不安でも、20~40kmくらいなら以外に簡単に達成できるものです。そして、徐々に距離を伸ばしていき、いつしか100kmが大きな目標になります。100kmという距離は、数値としての区切り以上に、実はビギナーにとってチャレンジのしがいがあり、大きな達成感を味わうことができる距離なのです。ただ無計画に走り続けているだけでは達成することが難しい。でも、ペース配分などに気をつけて走ることでクリアできます。
ペース配分
ペース配分とは、目的地までの距離から逆算して、自身の残りのスタミナと相談しながらバテないスピードで走り続けることです。ペースをコントロールすることは思いの外難しく、ついつい序盤から飛ばしすぎてしまってオーバーペースになりがちです。終盤のペースダウン、エネルギー切れによるハンガーノックになってしまうこともあります。
ペースコントロールの指標
走る距離が長くなればなるほど、自分自身の体力の範囲内のペースを守りながら走り続けることが大事なのです。このペースコントロールの指標になり、ゴールまで体力に合わせた走りをナビゲートしてくれるアイテムがあります。パイオニアのパワーセンサーです。パイオニアでは、専用のサイクルコンピューター(SGX-CA500)とセットで使用することで、ライダーの体力レベルに合わせて、限界に対する追い込み度合いを表示するシステムがあります。限界を100%とした時に、今どのくらいの割合で走っているのかをチェックできます。これを「リアルタイム・インターバル・インテンシティ」と呼びます。
使い方はシンプルです。楽しく走ることが第一であるロングライドでは、インテンシティは常に70%以内で走ることがオススメです。走っていて70%を超えたらペースを落とせば良いのです。または、途中で休憩を挟んでインテンティを下げてあげても良いでしょう。このようにインテンシティを目安に走ることで、安定したペース配分でロングライドを走ることが可能です。
■記事執筆者:橋本謙司(はしもと・けんじ)
スポーツジャーナリスト。自転車専門誌やランニング専門誌の編集者を経て、現在は、主にライターとカメラマンとして活動。Mt.富士ヒルクライム(一般の部)での総合優勝など、全国各地のヒルクライムレースで優勝多数。愛称は「ハシケン」。ホームページ http://www.hashikenbase.com
パワーを見れば楽に走れる
パワーとは?
「ペダルを踏んだ時の力の大きさを数字で表したもの」。パワーを端的に説明すると、こんなような感じです。この力の大きさは、W(ワット)という単位で表示されます。自転車を動かすために必要な力を明確にしたものですね。パワーメーターは、身体から自転車に伝わったわずかなパワーさえも、計測してくれます。とても高性能な計測機器なのです。それにしても、身体からの出力という目に見えない力を明確にしてくれるパワーメーターとはスゴイです。簡単に仕組みを説明すると、ペダルを踏んでクランクを回転させる中で生まれる力を計測しています。クランクを回す「力」と「速さ」の掛け算(トルク×ケイデンス)で求めています。
パワーメーターは手に入れやすくなった
元々は、世界のトップアスリートの競技力向上に役立つ機器として1980年代後半に誕生したものですが、今では趣味で自転車を楽しむサイクリストでもパワーメーターを持っていることが不思議ではありません。
かつて40万円はくだらなかったパワーメーターも、今では5~10万円ほどで入手可能です。自転車へのセットアップも簡単になり、パイオニアから登場したパワーセンサー は、手軽にインターネットサイトからも購入できます。
パワーメーターは、楽に省エネで走ることにも使える!
そして、これだけパワーメーターが普及した今、その活用方法も広がりを見せています。パワートレーニングという言葉があるように、パワーメーターには、「苦しい」「ストイックなトレーニング」というイメージがあります。しかし、最近では、走りながら自分自身の体力ゲージをリアルタイムに知ることができるパワーメーターの特徴を生かして、楽を求めて、省エネで走ることにも利用されています。つまり、トレーニングでパワーを高めるのではなく、今あるパワーを効率的に使いこなすという考えです。そこには、トレーニングという考えはありません。パワーを体力の指標にすることで、今よりも楽に走ることができるようになるのです。楽に走れれば、結果的に速く走れるようにもなります。ロングライドなどの後半で苦しむこともなくなります。体力の限界が近づいて、身体のあちこちが痛むことも減るでしょう。「もう歳だし・・・」、「もともと体力がないから・・・」そう思っている人でもパワーメーターを使うことで、努力せずとも、今よりも楽に走り続けられるようになります。
■記事執筆者:橋本謙司(はしもと・けんじ)
スポーツジャーナリスト。自転車専門誌やランニング専門誌の編集者を経て、現在は、主にライターとカメラマンとして活動。Mt.富士ヒルクライム(一般の部)での総合優勝など、全国各地のヒルクライムレースで優勝多数。愛称は「ハシケン」。ホームページ http://www.hashikenbase.com
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