体重とパワーの関係。パワーウエイトレシオとは?
体重とパワーの密接な関連
体格が大きくて体重がある人ほど、大きなパワーを出せて、小柄で細身の人の方がヒルクライムが得意ということは想像しやすいはずです。実際に、FTPが高い人ほど筋肉量が多い傾向にありパワーを出しやすいため、スプリント力に長けて、平地の巡航スピードも高めです。一方で、FTPは低くても上りは速い人もいます。ここには、体重とパワーが密接に関連しています。
※FTPとは、サイクリストの有酸素運動能力の限界値を示す数値。詳しくはこちら(「FTPよりも低いパワーを一定に保つことがロングライドのカギ!」)へ。
パワーウエイトレシオとは?
さて、FTPとは別にサイクリストのパフォーマンスを示す数値があります。パワーウエイトレシオ(PWR:Power Weight Ratio)です。これはクルマの加速性能を表す指標としても知られています。エンジン性能が高くても、ボディを含めた重量が重ければ、加速性能は劣ります。ロードバイクでも考え方は同じで、 FTPが有酸素運動能力の限界パワーであれば、パワーウエイトレシオは、加速性能や上り坂(ヒルクライム)での能力を示してくれます。
具体的に、体重の異なる2人のサイクリストを比較して見ましょう。Aさんは体重75kgあり、FTPは240Wです。一方で、細身体型のBさんの体重は60g、FTPは220Wでした。 FTPはBさんよりもAさんの方が高く、平地での純粋なスプリントや巡航能力はAさんの方が有利です。
ところが、体重の重さが加速性能に影響してくる上り坂(ヒルクライム)では、パワーウエイトレシオが重要になってきます。「FTP÷体重=パワーウエイトレシオ(W/kg)」で求めることができ、パワーウエイトレシオが高い方が、純粋な登坂性能が高いと言えます。
さて、二人のパワーウエイトレシオを比較します。FTP240WのAさんが3.2(W/kg)、FTP220WのBさんが3.6(W/kg)です。つまり、FTPでは劣るBさんのほうが、上り坂では速い傾向にあることがわかります。
同じFTPでも体重を減量するだけで パワーウエイトレシオを高めることができます。ダイエットに励むことによって、苦手な上り坂を克服することができるようになるのです。パワーウエイトレシオは、ツールドフランスを走るような世界の一流選手で、FTPの6.00~7.00倍、国内の実業団の上位レベルで5.00~6.00倍、アマチュアサイクリストで3.50倍前後と言われています。
体格(体重)によって得意なシチュエーションは変わる
パワーウエイトレシオは、あくまで上り坂での走力を示すものです。もし、ふたりのパワーウエイトレシオが同じ場合は、絶対的なFTPが高い方が、サイクリストとしての総合的なパフォーマンスレベルは高いと言えます。
ロングライドを走っていると、平地では自分よりも速いのに、上り坂になると遅れてしまう人がいるかもしれません。その逆もあるかもしれません。ペーシングの指標となるFTPだけでなく、パワーウエイトレシオを知ることで、、体格(体重)によって得意なシチュエーションが変わることを理解できるでしょう。坂道が苦手な人は、減量に取り組むことでパワーウエイトレシオを上げて、坂道の苦手克服が可能になります。
■記事執筆者:橋本謙司(はしもと・けんじ)
スポーツジャーナリスト。自転車専門誌やランニング専門誌の編集者を経て、現在は、主にライターとカメラマンとして活動。Mt.富士ヒルクライム(一般の部)での総合優勝など、全国各地のヒルクライムレースで優勝多数。愛称は「ハシケン」。ホームページ http://www.hashikenbase.com
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