向かい風に対する苦手意識を解消できるテクニック
ロングライド中に、向かい風のキツさを経験したことがある人も多いのではないでしょうか。坂道はもちろん辛いですが、向かい風も体力を奪います。特に、これから冬のシーズンを迎えると、北風が強く吹く日も多くなってきます。無意識に走るのと、向かい風対策をとるのとでは、同じロングライドを走っても疲労度合いは大きく違ってきます。そこで、今回は向かい風に上手に対応して楽に走るための対策を紹介します。実は、向かい風の辛さは、ちょっとした心掛けだけで解消できるのです!
時速20kmペースでも60%が空気抵抗
ここで紹介するロングライド時の向かい風対策は、その1「エアロフォーム」、その2「安全な集団走行」、その3「向かい風に合わせたシフトチェンジ」の3つです。
さて、そもそも自転車が受ける抵抗には、空気抵抗、路面抵抗、加速抵抗、転がり抵抗、駆動抵抗などがあります。これら総抵抗のうち60%以上を占めるのが空気抵抗です。しかも時速20kmほどで60%、時速30kmになると80%にも達するのです。このように、時速20〜30kmほどのロングライドペースでも、空気抵抗は苦しさを生み出す主な原因になっています。
ロングライド的なエアロフォームを身につけよう
1つ目の「エアロフォーム」と聞くと、ドロップハンドルの下を握った深い前傾姿勢をイメージしがちです。ただ、初心者にとってドロップハンドルを握ることが自体に不安を感じてしまうかもしれません。そこで、いつも通りブラケット部分を握ったままのエアロフォームを習得しましょう。このブラケットポジションでのエアロフォームのポイントは、腕をリラックスさせて肘と手首の位置を地面と水平に近づけてあげることです。この時に前面から受ける空気抵抗は、実は下ハンドルを握った時と変わらないか、むしろ軽減できるのです。
下ハンドルでは、高速域でもブレーキを掛けやすい、スプリントなど大きなパワーを発揮しやすい、というメリットもあります。ただ、そのメリットよりも、ロングライドでは無理のないエアロフォームを身につけることが大切です。
下ハンドルを握ったエアロフォーム(左)と、ブラケットを握ったエアロフォーム(右)を比較すると右の方がフォームをコンパクトにできることがわかる
ブラケットを握ったまま、肘を曲げて姿勢を低くする意識を持つ
自転車2台分の車間でも十分効果あり
2つ目の「安全な集団走行」は、人の後ろについて抵抗を軽減させてもらう走行テクニックです。エアロフォーム同様に、初心者の場合は人の後ろにピッタリ付いて走ることに恐怖を感じてしまうかもしれません。でも、決して前の人にギリギリまで接近して走らなくても、十分な空気抵抗の軽減効果はあるのです。実際、前の人と自分の間に自転車2台分(1台の全長は約170cmなので3m以上)が空いていても効果は感じらるのです。ロングライドイベントでは、できるだけ単独で走る時間を減らして、参加者や仲間同士で協力しながら楽をし合うことが大切なのです。
自転車2台分の車間でも十分効果あり
坂道と同様の意識でシフトチェンジを行おう
3つ目の「向かい風に合わせたシフトチェンジ」は、向かい風の強さに応じて、積極的にシフトチェンジを行って、脚へ負担がかからないようにするテクニックです。坂道ではシフトチェンジをして軽いギヤを選んでいる初心者はいても、向かい風の強さに応じてシフトチェンジをしている人は少ないです。坂道で受ける重力抵抗と向かい風による空気抵抗は同様の意識を持って走ることが大切です。
なお、横風が強い時には、あまり軽すぎるギヤよりも、ある程度トルクを掛けながら走るとバイクを安定させながら走ることができます。風の状況に応じてギヤを使い分けることもポイントです。
坂道と同様の意識でシフトチェンジを行おう
このように、向かい風を意識しながら、今回紹介したテクニックを積極的に実践することで、これまで苦手にしてきた向かい風でも楽に走ることができるようになります! 次の週末にロングライドへ出かけるとき、是非実践してみてください。
■記事執筆者:橋本謙司(はしもと・けんじ)
スポーツジャーナリスト。自転車専門誌やランニング専門誌の編集者を経て、現在は、主にライターとカメラマンとして活動。Mt.富士ヒルクライム(一般の部)での総合優勝など、全国各地のヒルクライムレースで優勝多数。愛称は「ハシケン」。ホームページ http://www.hashikenbase.com
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