3つの省エネ戦法で「らくライド」
はじめて自転車イベントに挑戦しようと思っている初心者ほど、自転車レースは純粋な力勝負だと思っているようです。まったくそんなことはありません。むしろ、自転車レースはスキルを高めることでパフォーマンスを飛躍的に高めることができます。それは、レースだけでなく、競わないロングライドイベントでもラクに楽しく完走するためには欠かせない走行スキルになります。ここでは、3つの省エネ戦法をご紹介します。体力に自信がない人ほど効果を実感できるため、ぜひ実践してみましょう。
踏まずに回して加速しよう!
何かを動かそうとする時に、直感的に力を加えたくなるのは当然です。しかし、クランクを回して推進力を得られる自転車では、力を加えなくても、回転数を早めることでも同じように推進力を得ることができます。よく重いギヤを一生懸命に踏み込んでいるサイクリストを見かけますが、この時、シフトチェンジでギヤを軽くして、クランクの回転数(ケイデンス)を高めてあげる意識を持ちましょう。踏まずに回すことで、筋肉を疲労させずに加速することができます。この当たり前のテクニックを活用できていない人が多いようです。
トルクと回転数のかけ算で速度は求められるため、回転数を上げることで加速できる
平地でエアロフォームを活用しよう!
つぎに、自転車レースは常に抵抗との戦いであることを意識しましょう。路面抵抗、駆動抵抗などさまざまな抵抗がある中でも、空気抵抗は全抵抗のうち80%を占めています。その中で人が受ける抵抗は8割以上になります。つまり、ラクに走るためには、人が受ける抵抗をいかに減らすことが大切か理解できるはずです。スキルのひとつがエアロフォームですが、けっしてレースだけで使えるスキルではありません。ロングライドでもエアロフォームの効果は絶大です。
骨盤を基点にして上体の前傾を調整する 合わせてヒジを曲げることがポイント
時速30kmで走行時、上体を起こしたノーマルフォームと腕をやや曲げて前傾姿勢を取ったエアロフォームでは、20%の空気抵抗を減らすことができます。時速30km走行時、300Wが必要なところを240Wで済むのです。この効果は絶大です。
坂道区間で集団を利用しよう!
3つ目の省エネ戦法は、ロードレースやエンデューロレース、ロングライドなどで登場する坂道をラクしてクリアする走り方です。これは一緒に走っている集団を利用する走行テクニックです。集団が登坂区間に差し掛かったとき、集団先頭と最後尾ではタイムラグが生じます。この時間差を利用します。
まず登坂開始時には集団の先頭で登り始めましょう。そして、登坂が終わる頂上は集団の最後尾でクリアするようにペースをコントロールしながら登ります。こうすることで、登坂区間を周囲のライバルよりも時間をかけて、つまり強度を落として走ることができます。
ライダーAは、他のライダーよりもペースを落として坂道区間をクリアできる
毎周回に坂道が登場するサーキットエンデューロなどでこのテクニックを活用すれば、最後まで足を溜めて走ることができます。もちろん、このテクニックは基本的には集団走行の秩序を乱さないことが基本です。坂道の直前に突然集団先頭に上がるような動きは危険です。あくまで集団走行の秩序を遵守したうえで、流れに乗って行うことが求められる「やや高度なテクニック」になります。
「踏まずに回して加速」「無理のないエアロフォームの活用」「坂道区間で集団を利用」。この3つの省エネテクニックを実践するだけで、これまでよりも圧倒的にラクに速く走れるようになること間違いありません。ぜひ、次のイベントで試してみてください。
■記事執筆者:橋本謙司(はしもと・けんじ)
スポーツジャーナリスト。自転車専門誌やランニング専門誌の編集者を経て、現在は、主にライターとカメラマンとして活動。Mt.富士ヒルクライム(一般の部)での総合優勝など、全国各地のヒルクライムレースで優勝多数。愛称は「ハシケン」。ホームページ http://www.hashikenbase.com
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