スチール・アルミ・カーボン フレームの素材のイロハを知ろう
この四半世紀の間に、主流となるフレーム素材は、スチール(鉄)からアルミ、そしてカーボンへと変化してきました。現在、この3つの素材はどれも使われているものの、いわゆるレーシングバイクの世界ではカーボンがほぼ独占状態です。ここでは、これら3つの素材の特徴を紹介していきます。
クロモリ
まず、1990年代中盤までフレームの主流だったスチール(鉄)。スチールと言ってもいくつか種類があり、主に使用されていたのは「クロームモリブリテン鋼」。よく「クロモリ」と呼ばれているそれです。
クロームモリブリテン鋼
鉄に複数の鉱物を混ぜ合わせて作られる合金で、ツール・ド・フランスを走るバイクも当時はクロモリがほとんどでした。純粋な鉄よりも強度が高く、チューブ厚を薄く作れること特長です。細身のチューブでも高い強度を実現できるため、現在では、その美しいシルエットを生かして、ファッションやツーリング系のバイクの素材として活躍しています。
クロモリは細身のチューブでも高い強度を実現できる
アルミ
スチールよりも軽量な素材を特徴とするアルミは、スチールに変わって90年代半ばからロードバイクの素材として台頭し出しました。アルミは、マグネシウムや亜鉛、ケイ素、ニッケルなどを添加して作られる合金で、軽さを生かしてチューブを大径化させて剛性を上げるなどフレーム剛性をコントロールしやすくなりました。剛性を高めつつも、スチールより軽量なフレームを実現できます。
肉薄で大口径のアルミチューブは、剛性と軽さを両立できる
このアルミ隆盛の背景には、強度と軽さの両立を求めたMTBの存在もありました。90年代、空前絶後のMTBブーム到来が、アルミフレームに注目が集まるきっかかけになったのです。
なお、アルミチューブ同士を溶接して作られるため、つなぎ目にはビードと呼ばれる溶接痕が残ることが多いですが、最新のアルミフレームでは、表面処理をほどこして凹凸のない美しい仕上げのモデルも多くなっています。フレーム素材としてメジャーな6000番台のアルミ合金は、高い強度と軽さを両立でき、量産性にも優れています。
ロードバイクのフレームには6061番のアルミ合金がよく使われている
このように剛性が高く安価でもあるため、ロードバイクの主役の座をスチールから引き継ぎましたが、その歴史はカーボンの登場によって長くは続きませんでした。現在、アルミフレームは剛性と軽さを追求するレーシングバイクのエントリーグレードで採用されることが多くなっています。
カーボン
いよいよ2000年代から現在に至るまで、ロードフレームの主流はカーボンへ。実は、自転車フレームにカーボンが採用され出した歴史は古く、1980年代から登場しています。1986年のツールを制したグレッグ・レモンが乗っていたバイクもカーボンでした。ただ、当時はカーボンの加工技術が進化しておらず、どのメーカーも量産できるほどの技術を持ち合わせていませんでした。そのようなこともあり、アルミの時代を経て、2000年代半ばから技術進化を果たしたカーボンが普及し出しました。
カーボンは、炭素繊維強化プラスチックとも呼ばれ、炭素繊維を編んだカーボンシートを樹脂で貼り付け合わせてフレームの金型で焼くことで成型します。
炭素繊維を編んだカーボンシート
カーボン素材は、振動吸収性に優れ、快適性を飛躍的に向上させるだけでなく、アルミよりも軽さや剛性を高めることができる特徴を持ちます。さらに、設計の自由度も高く、現在の個性豊かなロードフレームは、カーボン素材だからこそ為し得ているとも言えるでしょう。
設計の自由度が高いカーボンフレーム
さて、カーボン繊維が持つ性質に、繊維方向に引っ張った時の変形のしにくさを表す弾性率があります。一般的に、高価なカーボンほど弾性率が高く、引っ張りに強く素材は硬くなります。この変形のしにくさを「剛性が高い」と表現します。もちろん、カーボンの性質だけでなく、その加工や設計によって、フレームの剛性を幾らでも変えることができるので、そこはメーカーの腕の見せ所です。
一体成型のモノコックフレームが現在のスタンダード
スチール、アルミ、カーボン。自転車のフレーム素材の変遷とそれぞれの特徴を紹介してきました。フレームの素材に興味を持つことで、ロードバイクの新たな一面を感じることができるでしょう。
■記事執筆者:橋本謙司(はしもと・けんじ)
スポーツジャーナリスト。自転車専門誌やランニング専門誌の編集者を経て、現在は、主にライターとカメラマンとして活動。Mt.富士ヒルクライム(一般の部)での総合優勝など、全国各地のヒルクライムレースで優勝多数。愛称は「ハシケン」。ホームページ http://www.hashikenbase.com
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