オールラウンダー? クライマー? スプリンター? MMP曲線からわかる脚質タイプ
グランツールを走るトップ選手から週末サイクリストまで、レベルは違っても、サイクリストは全員、脚質が異なります。独走力があり、起伏にも強く、あらゆる地形に対応するオールラウンダー型。山岳を軽快に駆け上がるクライマー型。ゴール前で爆発的な加速をみせるスプリンター型。さらには、アタックなどを得意とするパンチャー型。それぞれ脚質のタイプによって得意とするフィールドが異なっているからこそ、自転車競技はさまざまなドラマが生まれます。
さて、そんな脚質ですが、自分自身のタイプも知ることができます。その判断基準となるのが、MMPグラフです。MMPは「Mean Maximal Power」の略語で、「特定の持続時間での平均最大パワー」のことです。MMPグラフによって持続時間の違いによるパフォーマンスの差をチェックすれば、そのライダーが高い出力を出せる持続時間、逆に出力を出しにくい苦手とする持続時間を知ることができます。
パワー・プロファイル一覧の代表的な持続時間であるFTP
FTPは「1時間持続可能な平均パワーの最大値」であるため、FTPが高いことは一定ペースで走り続ける力に長けており、タイムトライアルやヒルクライム能力が高い傾向にあります。FTPの他には、5秒間、1分間、5分間の持続時間があり、時間あたりの能力により脚質を分けることができます。
これらをライダーの体重1kgあたりの出力で表したパワー・ウェイト・レシオ(W/kg)で一覧化したものが「パワー・プロファイル一覧」です。この一覧から自分自身の脚質や世界中のライダーの中での自分自身のレベルも知ることができます。
パワー・プロファイル一覧
こちらの一覧表は、『パワー・トレーニング・バイブル』掲載の一覧表(男性)をベースにレベル分けを簡素化させています。より詳しいレベル分けは、『パワー・トレーニング・バイブル』をご参照ください。
脚質はもちろん、長所や短所のレベルもわかる
4つの時間ごとのパワー・ウェイト・レシオをチェックすることで、得意・不得意な領域を把握することができます。
スプリントやアタックなどを得意とする脚質の場合は、5秒や1分の短時間高強度の数値が高く、逆にFTPが高い場合はタイムトライアルやヒルクライムが得意であることがわかります。1分や5分の数値が高い場合はパンチャーと呼ばれる短時間高強度のアタックを得意としている傾向にあります。
MMPグラフからも脚質タイプがわかる
パワー・プロファイル一覧の作成に必要な、持続時間ごとの最大パワーは、パイオニアのデータ解析サービス「シクロスフィア」で表示可能なMMPグラフでチェックすることができます。こちらは、日々のトレーニングデータやレースデータの蓄積から自動的に自分自身のMMP曲線を作り上げてくれる優れものです。
MMPグラフ
MMP曲線からは長所だけでなく短所も把握することができます。
5秒や1分の数値に比べてFTPが高い場合は、独走力や登坂力に優れている反面、スプリント力に劣ると推測することができます。長所を伸ばすと同時に、短時間高強度のスプリントトレーニングを取り入れるなどして、短所の能力を高めることも大切です。短所を引き上げることで、全体のパフォーマンスを引き上げることにもつながるためです。
日々のトレーニングデータが反映されていくMMPグラフ自体の向上をチェックしつつ、MMPグラフの曲線の変化にも注目することも大切です。
最後に、パワー・プロファイル一覧では、能力ごとに世界中のサイクリストの中での自分自身の位置を知ることもできるため、日々のトレーニングのモチベーション向上にもつながるでしょう。
■記事執筆者:橋本謙司(はしもと・けんじ)
スポーツジャーナリスト。自転車専門誌やランニング専門誌の編集者を経て、現在は、主にライターとカメラマンとして活動。Mt.富士ヒルクライム(一般の部)での総合優勝など、全国各地のヒルクライムレースで優勝多数。愛称は「ハシケン」。ホームページ http://www.hashikenbase.com
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