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パイオニアのサイクルスポーツ事業を振り返る ~パワーメーターの革命児! 世界初、ペダリングの可視化を実現~

2020年2月17日

国産メーカーとして初となる量産型パワーメーター。さらに、世界初となるペダリングをリアルタイムに可視化するペダリングモニターの開発。これまでパイオニアがサイクリングシーンにもたらした功績は大きいといえるでしょう。現在、ペダリングモニターは第三世代まで進化し、2019年1月には多くのファンを獲得することになるGPS多機能サイクルコンピューター「SGX-CA600」をリリースしました。そんな矢先に、パイオニアサイクルスポーツ事業の株式会社シマノへの事業譲渡の発表がありました。大きなニュースとして我々サイクリストの耳に届いたのはつい先日のことです。ここで、これまでのパイオニアのサイクルスポーツ事業部の歴史を振り返ってみたいと思います。

 

ポタナビから始まったサイクルスポーツ事業への挑戦

オーディオ機器を中心とした事業を展開してきたパイオニアが、はじめて開発した自転車商品が「ポタナビ」でした。自由気ままに走りながらも目的地を示し、オススメのカフェなど立ち寄り施設もナビしてくれる「ポタナビ」は、ポタリングを楽しむサイクリストの強い味方として支持を集めました。このポタナビが誕生したのは2008年のことで、当時カーナビ事業で実績を積んでいた背景を生かして開発されたのでした。

2008年に発表された「ポタナビ」がサイクルスポーツ事業初の製品になった

2008年に発表された「ポタナビ」がサイクルスポーツ事業初の製品になった

 

世界初を目指したペダリングモニター

続いて、開発を目指したものがペダリングモニターでした。まだパワーメーターを商品化するメーカーが今ほど多くない時代であったにも関わらず、パワーだけでなく、左右差やペダリングのベクトルまで測定できる世界初のパワーメーターの実現をめざしたのです。ポタナビ同様に中核事業で長年培ってきた精密機器のノウハウを投入した結果、画期的な製品が生み出されました。そのタイミングでサイクルスポーツ事業部が新たに立ち上げられ、開発力を高めていったのです。

2011年の秋のサイクルモードで、ペダリングのベクトルをリアルタイムに表示するサイクルコンピューターの試作品となる試作品がはじめてお披露目されました。

2011年秋のサイクルモードで展示された試作品

2011年秋のサイクルモードで展示された試作品

 

その後も開発は進み、 2013年10月に初代ペダリングモニターが誕生。ペダリング1回転(360度)の中に、30度ごとに計12カ所で「力の大きさ」と「力の方向」を計測してペダリングを可視化。その数値をリアルタイムに表示するサイクルコンピューター「SGX-CA900」も発表されたのです。

ペダリングスキルを数値とグラフィックで可視化

ペダリングスキルを数値とグラフィックで可視化

 

日本初のペダリングスキルも計測可能なパワーメーターとして、トレーニング志向の強いアスリートたちから大きな反響を得ることに成功しました。

ペダリングのベクトルの可視化に成功したSGX-CA900の表示画面

ペダリングのベクトルの可視化に成功したSGX-CA900の表示画面

 

開発段階では試行錯誤の繰り返し

しかし、そこまでの開発には苦労も多かったようです。精密機器の製造にはそれまでに蓄積されてきたノウハウを活用できたものの、アウトドア製品を手がけることは実質はじめての挑戦でした。しかも、プロのレース環境は想像以上に過酷でトラブルも多く発生しました。担当者のひとりは、当時を次のように振り返ります。

 

「当時、トッププロチームであるベルキン・プロサイクリングチームとの協力関係を築けたことは大きかったです。プロの自転車競技の世界で通用するためには防塵性、防水性が高いレベルで求められました。開発段階では、ペダリングでクランクがしなることによりわずかな隙間ができ、そこから浸水することも。長時間のレースの前半と後半で、ひずみゲージへ太陽が当たる角度が変化するだけで安定した計測ができなくなったこともありました」

 

一般ユーザーの使用時には想定されないような過酷な使用環境下でも妥協なく改良を重ねた結果、ペダリングモニターは初代モデルからひじょうに高い精度を実現しました。開発には苦労も多かったものの、パイオニアはペダリングスキルを可視化できる量産型のパワーメーターを世界ではじめて商品化することに成功したのです。これを可能にしたのは、「こだわりのある人のための商品を作る」という企業文化を持つ、パイオニアの技術者たちの妥協なき情熱でした。

2013年10月に発表されたペダリングモニターの初代モデル

2013年10月に発表されたペダリングモニターの初代モデル

 

より手の届きやすいパワーメーターを目指して

初代モデル発表からわずか1年。ユーザーやサポート選手からの多くのフィードバックを改良に役立てて、2014年には早くも第二世代を発表。サイクルコンピューターSGX-CA500は小型・軽量化を果たし、パワーメーターの低価格化を実現しました。第二世代で完成度はさらに高まり、計測精度は現行モデルとなる第三世代と遜色ないレベルになっていました。

その後は、より低価格化を実現できる片足計測モデルやアルテグラや105グレードを展開するなど、パワーメーターをより身近な存在に変えていきました。その過程で、トップ選手たちのシビアなトレーニング機材としてだけでなく、初心者のペダリングスキル習得や無理なく走るためのペース配分に役立つアイテムとしての価値を高めてくことになります。

2014年4月に誕生した第二世代モデル

2014年4月に誕生した第二世代モデル

 

拡張性を高め、よりファンライド層にも支持を得る

そして、現在の第三世代は2018年11月に誕生。前世代の構造を継承しつつ、通信規格Bluetoothに対応させることで、スマートフォンと連動するなどパワーメーターの拡張性を高めていきました。さらに、最新のナビゲーション機能を搭載した多機能GPSサイクルコンピューター「SGX-C600」をリリース。前作「SGX-CA500」がモノクロのデータ表示が中心で競技者向けだったのに対して、「SGX-CA600」はフルカラー表示、ナビ機能、専門的なパワーデータのグラフック化など、ファンライド層にも魅力を感じてもらえるサイクルコンピューターとして発売以来大きな支持を得てきました。インドアトレーニングアプリ「Zwift」に対応するスマートトレーナーとのスムーズな連携も実現。初心者のパワーメーターに対する敷居を一気に下げることに成功しました。

2018年11月に発表された第三世代モデル(現行品)

2018年11月に発表された第三世代モデル(現行品)

 

この他にも、スマートフォンの専用アプリである「Cyclo-Sphere Control(シクロスフィアコントロール)」との連携も画期的でした。多機能化と小型化が進むサイクルコンピューターの操作をスマートフォン上で完結させることに成功。最新モデルのユーザービリティは大幅に進化を遂げています。

2011年の試作品発表以降、進化を遂げてきたペダリングモニター

2011年の試作品発表以降、進化を遂げてきたペダリングモニター

 

2008年発表のポタナビにはじまり、ペダリングの可視化を実現したペダリングモニターとサイクルコンピューターの誕生。ここまでパイオニアサイクルスポーツ事業を振り返ってきました。およそ10年で、ペダリングモニターは日本のみならずライバルメーカーも多い世界中で支持され、群雄割拠のパワーメーター市場の中でも確かな存在感を示すことに成功しました。とりわけ、細かいデータの分析や高い品質を求める日本人サイクリストの中でのシェアは高いといえます。筆者である私自身もそのうちのひとりです。これからも、当面変わらず使い続けることになるでしょう。

 

次回は、事業譲渡が決定したパイオニアによる今後のカスタマーサポート対応などを中心にレポートをしていきます。

 

■記事執筆者:橋本謙司(はしもと・けんじ)

スポーツジャーナリスト。自転車専門誌やランニング専門誌の編集者を経て、現在は、主にライターとカメラマンとして活動。Mt.富士ヒルクライム(一般の部)での総合優勝など、全国各地のヒルクライムレースで優勝多数。愛称は「ハシケン」。ホームページ http://www.hashikenbase.com

 

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