バーチャルCdA(空気抵抗値)を試してみた! ~SGX-CA600ファームウェアのアップデート~
時速25kmを出し続けることは難しくなくても、時速30kmキープとなると苦しくなるサイクリストは多いはずです。スポーツバイクの走行には空気抵抗が大きく影響しますが、スピードが高まるほど空気抵抗の割合が大きくなっていきます。時速30kmまで近づくと、その占める割合はあらゆる抵抗のうち80%ほどになると言われています。初心者から中級者へのステップアップである「時速30kmの壁」を突破するためには、いかにして空気抵抗を減らすことがカギになってきます。
エアロフォームが大切
まず、前面投影面積(ライダーとバイクを正面から見たときの面積)を小さくするためにエアロフォームが大切であることは知られています。具体的には、ヒジを広げず脇を締め、上体を倒して低い姿勢を取るようにしましょう。このとき、上体が起き気味のノーマルフォームと変わらずスムーズにペダリングができることも大事です。
こうしてエアロフォームを意識するだけで、巡航速度は時速2~3km簡単に上げることができます。このときの抵抗の変化を、感覚だけでなく数値として知ることができる機能が今回紹介する「バーチャルCdA」と言えるでしょう。
エアロフォームの習得は巡航速度の向上に直結する
空気抵抗の存在を意識させるバーチャルCdA
実際に、バーチャルCdAを試してみました。まずは、一定のペダリングで出力を一定に保ちつつ、フォームをいろいろと変化させてバーチャルCdAをチェックしてみます。走り出してすぐにディスプレイに表示される抵抗値に変化が見られました。パワー(出力)が一定であることが条件にはなりそうですが、確かに低い前傾姿勢を取ることで空気抵抗値は小さくなることを確認できました。
このバーチャルCdAは、ただ数値だけでなく、フォームの判定機能まで備わっている点が魅力的です。つまり、CdAが下がれば「Good!」判定、CdAが上がれば「Bad…」判定、ノーマルでは「判定なし」(表示なし)、というように空気抵抗の増減を一目で確認できるようにビジュアルで表示してくれています。CdAと聞くと難しそうですが、ビジュアルで表示されるので初心者にも空気抵抗の存在が身近に感じられるはずです。
GPSで収集したデータからCdAを導き10秒平均値で表示
出力、スピード、風向きを表示させて走行し、その時のCdAをチェック
CdA比較時の走行条件を可能な限り揃えて行う
今回、実際に使用してみての率直な感想としては、どんなにエアロフォームに変化させても、その時に出力が高まれば、抵抗の判定はBadになりやすい傾向にありました。つまり勾配の変化が大きかったり、進行方向が常に変化したりする中では、なかなか安定した数値を得にくいかもしれません。そこで、バーチャルCdAをチェックする時は、次のような条件下で走行することをオススメします。
まず、風情報(風速と風向き)が同じであり、直線平坦基調のコースで試してみましょう。長い直線コースの中で、トルクを一定に保つことでフォームの変化によるCdAの変化を知ることができます。風情報は1時間に1度更新されるため、その1時間の中でチェックすることで正確性をある程度約束できます。
スタート前にアプリ経由で風情報を取得しておく
空気抵抗を感覚だけでなく数値でも示してくれる
このように、「フォームを変えるだけで、これだけ抵抗値が変化するものなんだ」「風を受けて走るのではなく、人の後ろについて走るだけで大きく抵抗値が下げるものなのだ」といったことを感覚だけでなく数値でも示してくれる機能がバーチャルCdAです。もちろん、ピトー管を採用した本格的な計測器のような精度を目指したものではなく、あくまでバーチャルCdAです。
普段のロングライドやレースの中で、空気抵抗の大切さを感じてもらい、少しでも抵抗を減らすための意識を持ってもらうことがバーチャルCdAの開発の目的でもあります。ぜひ一度、バーチャルCdAを使って、フォームと空気抵抗の関係性を体験してみましょう。
空気抵抗を減らせば楽をして走れることを意識しよう
■記事執筆者:橋本謙司(はしもと・けんじ)
スポーツジャーナリスト。自転車専門誌やランニング専門誌の編集者を経て、現在は、主にライターとカメラマンとして活動。Mt.富士ヒルクライム(一般の部)での総合優勝など、全国各地のヒルクライムレースで優勝多数。愛称は「ハシケン」。ホームページ http://www.hashikenbase.com
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