3つの荷重を意識的に使い分ければ、ロングライドが楽に走れる
首や腕が張ってくる。腰が痛み出す。脚が疲れ出す。最近、スポーツバイクを始めたばかりだと、長時間乗っていなくても、これらの症状が出てしまうかもしれません。少なくもと、ロングライドを走ったことがある人なら、誰でも経験したことがあるでしょう。
そこで、これらの張り、痛み、疲れを軽減して、ロングライドを最後まで快適に走りきれるポジションを紹介します。ポイントは、3つのポジションを使い分けることです。ロングライドを、らくに走るためのコツを身につけましょう。
ロングライドのイメージ
荷重する位置を意識的に変化させよう
日頃、走っているときに、バイクの上での荷重する位置を意識したことはありますか。バイクと身体の接点は、サドルとペダルとハンドルの3点です。そして、それぞれ、お尻、脚、腕で身体を支えています。無意識に乗っているだけでは、どこか1点にのみ荷重し続けるポジションで走っているはずです。こうなると、かなり頑丈な身体でない限り、お尻や脚や腕などに局所的なストレスがかかるのは当然です。そこで、ロングライドでは、バイクの上で荷重する位置を意識的に変化させることが重要なのです。
真横からのポジション
ペダルへの荷重を高めるポジションが基本
ペダルに大きなパワーをかけて、効率的にスピードを上げたいという場合は、ペダルへの荷重を高めるポジションがオススメです。ペダルへしっかり荷重するためには、ハンドルやサドルに大きく荷重してはいけません。ペダルに体重を乗せる意識を持つことがポイントです。実はこのポジションが、ロードバイクに乗る上でのポジションとしては基本になります。
定期的に前後へ荷重を微調整しよう
ペダルへの荷重を高められれば、力強いペダリングができるようになります。ただし、上体を体幹で支える必要があります。初心者にとって、長時間体幹を意識し続けることは少しハードルが高いでしょう。そこで、荷重位置をハンドル側(前方)やサドル側(後方)へ定期的に微調整しながら、身体にかかる負荷を分散してあげることが、今回のテーマでもある、ロングライドを楽に走るためのコツです。
サドル荷重が悪いわけではない
荷重を前方へ移動する場合でも、ハンドルへ全体重を乗せてしまうとバイクコントロールが不安定になるので、気をつけましょう。サドルへの荷重を抜くイメージを持つとよいでしょう。そして、腕は突っ張らず、肘をやや曲げたフォームを作ります。
前荷重で腕を曲げたフォーム
一方で、荷重を後方へ移動すると、腕への負荷が軽減され上体が楽になります。
後荷重でサドルに座ったフォーム
初心者の中にはサドルへどっしりと座っているケースも見られます。一時的にサドル荷重のポジションを取ることは悪いことではありません。要は、身体と接している3点への荷重の使い分けが重要なのです。
3つのポジションを使い分けることで、ロングライド後半でも身体への局所的な疲労を軽減でき、最後まで楽に走り続けることができるようになります。今度の週末、バイクの上での荷重を意識的に変化させてみましょう。これまで感じたことのない、快適なライドを楽しめるはずです。
■記事執筆者:橋本謙司(はしもと・けんじ)
スポーツジャーナリスト。自転車専門誌やランニング専門誌の編集者を経て、現在は、主にライターとカメラマンとして活動。Mt.富士ヒルクライム(一般の部)での総合優勝など、全国各地のヒルクライムレースで優勝多数。愛称は「ハシケン」。ホームページ http://www.hashikenbase.com
気温や走りのスタイルに合わせた秋冬ウエアコーディネート
自転車の魅力のひとつは、四季を五感で感じられるところでしょう。気づけば猛暑続きだった夏も終わり、肌寒い日も増えてきましたね。あっという間に寒さが堪えるウィンターシーズンの到来です。ここでは、秋~冬シーズンにかけての快適ウエアリングのポイントを紹介します。
ポイントは防風性と吸湿速乾性
寒い時期のウエアリングのコツは、外気からカラダの冷えを防ぐことと、内側からの発熱をうまく外へ逃がしてあげる吸湿速乾性を両立することです。防寒対策だけでは、ジャージの中に熱がこもってしまい蒸れを起こしてしまい温度調整がうまくいきません。汗冷えの原因にもなってしまいます。
最近スポーツバイクを始めたばかりの方の中には、自転車専用ではなく保温性の高い一般的なヒートテックウエアやインナーを愛用している人もいるかもしれません。でも、冬のウエアこそ、自転車専用に設計されたサイクルジャージを着用する価値があります。
シーン別の具体的なウエアリングを紹介
まず、同じ冬でも秋口から冬にかけて(10~12月)と真冬(1~2月)でスタイルが変わってきます。
秋は朝晩と日中で寒暖差があるので、走りながら温度調整ができるウエアを選びましょう。
真冬のジャケットに求めたい機能は大きく2つ。ひとつが、氷点下にも対応する防風機能。もうひとつが、ジャージの中に適度に熱を滞留させて保温性を保つ機能です。
ここでは、シーン別に具体的なウエアリングを紹介します。
朝晩と日中で寒暖差が大きい秋
吸湿速乾性に優れる長袖ジャージに加え、保温性と透湿性に優れるインナーウエアを着用します。気温が高い日は、半袖ジャージにアームカバーを組み合わせると温度調整がしやすいです。パンツも同じく、膝上丈のビブショーツにレッグカバーを活用しましょう。
膝上丈のビブショーツ
夕方になると気温がグッと下がるので、携帯性に優れるウィンドブレーカーがあると安心です。なお、ポケット付きのウィンドブレーカーであれば、ジャージにプラスして収納力が増すのでオススメです。
ウィンドブレーカー
1日を通して気温が上がらない冬
冬用のジャケットには、前面に防風素材が採用されており冷気をシャットアウトしてくれる一方で、背面は熱を逃がす速乾性に優れる素材を使い分けた機能性モデルがオススメです。裏生地に起毛素材を採用するモデルも多く、秋から冬にかけての寒い日にも対応します。
冬用のジャケット
パンツには、膝まわりの冷えを防ぐ膝下丈のビブショーツをコーディネートしましょう。
膝下丈のビブショーツ
末端を冷やさないために、薄手の長指グローブやトゥカバーも活用しましょう。
薄手の長指グローブ
トゥーカバー
氷点下にもなる真冬
裏起毛素材など保温性を約束する素材を採用するジャケットがベースになります。くるぶしまで覆うロングタイツと組み合わせましょう。
厚手で保温性の高い冬用ジャケット
ジャケットだけでなくタイツにも前面防風素材と裏起毛を採用することが多く、厚手の生地が特徴になります。そのため、ペダリングの動きを阻害しない立体縫製を採用する機能性ビブタイツがオススメです。
厚手で保温性の高い冬用タイツ
末端を冷やさないためのアイテム
このように、冬の天候(気温)に合わせた3つのウェアリング術を紹介しました。
このほか、冬は手先や足先などカラダの末端を冷やさないためのアイテムも積極的に活用しましょう。長指の冬用グローブやシューズカバー、首回りを冷やさないネックカバーなどは快適な冬のライドを約束する必須アイテムです。また、日没も早い秋冬はリフレクターを採用するアイテムを選び安全性を高めてあげましょう。
冬用グローブ
シューズカバー
ネックカバー
気温だけでなく走りのスタイルに合わせたコーディネート
最後に、ウエアリングのコツは気温を基準にしつつも、その日の走りのスタイルに合わることも大切です。
ロングライドなら、レース的な走り方よりも発汗量が少ないため、防風性と保温性の高いジャケットがオススメです。一方で、よりアクティブにヒルクライムなどを楽しむなら、体温の上昇を想定して、あえて薄手の長袖ジャージを選んでも良いでしょう。
ジャージポケットにはウィンドブレーカーかジャケットを携帯し、下山時に重ね着をします。末端を冷やさないための長指グローブやシューズカバーも必須です。これらを入れた小さなバックパックを背負うスタイルもオススメです。
■記事執筆者:橋本謙司(はしもと・けんじ)
スポーツジャーナリスト。自転車専門誌やランニング専門誌の編集者を経て、現在は、主にライターとカメラマンとして活動。Mt.富士ヒルクライム(一般の部)での総合優勝など、全国各地のヒルクライムレースで優勝多数。愛称は「ハシケン」。ホームページ http://www.hashikenbase.com
シューズのクリートを調整したことありますか?
クリートの取り付け位置にこだわろう
ロードバイクに乗っている人のほとんどが使っているビンディングペダル。ペダルとシューズを固定することで、ペダリングを効率化できるだけでなく、ペダルを踏み外すこともなく安全面でもオススメです。
シューズの底にはクリートと呼ばれるペダルをキャッチするための専用パーツが装着されています。このクリートの取り付け位置次第で、ペダリングの感覚が変わってきます。ほんの数ミリのセッティングの違いで、ペダリング時の感覚がハマったり、逆に違和感が出てしまうこともあります。今回は、クリートの基本的なセッティング方法とクリートの種類について紹介します。
シューズの底にはクリートと呼ばれるペダルをキャッチするための専用パーツが装着されている
拇指球と小指球を結んだ位置の中心にクリートをセッティング
クリートのセッティングは、前後位置と左右位置で決めることができます。まずセッティングの目的は、ペダリング運動の中で、もっともパワーを伝えるべき3時のタイミングで力を伝えやすい位置へ調整することです。もう一つが、膝関節に負担がかからないスムーズな足の動きができる位置へ微調整することです。
前後位置を決める目安は、まずは足の拇指球と小指球を結んだ位置の中心にクリートをセッティングします。シマノやLOOK(ルック)のクリートの外側にはクリートの中心を示す目印があるので参考にしましょう。これでおよその適正範囲へのセッティングは完了です。
拇指球と小指球を結んだ位置の中心にクリートをセッティングする
前後への微調整はペダリングのタイプで傾向が分かれる
ここからは、個々のペダリングに合わせた微調整へと入っていきます。調整のコツは、焦らず微調整を繰り返すことです。せっかく中心へセッティングできたクリート位置を無駄にしないようにしましょう。クリートの前後への微調整の目安は、クランクが3時の位置で、かかとがやや下がり気味で踏み込むタイプなら、クリートを後ろめへ動かしてみましょう。ヒルクライマーやトルク型で踏み込むタイプの人が好む傾向にあります。
一方で、クランクが3時の位置で、つま先から踏み込むタイプなら、クリートをやや前めへ調整してみましょう。脚の筋力を使わずに高ケイデンスでペダリングをするタイプの人に好まれやすいです。
かかとが落ちやすい人はクリートを後ろめに微調整
左右位置はクランク並行が基本。スムーズに踏み込める位置へ
さて、前後への微調整が決まれば、あとは左右位置の調整です。基本的にはシューズのセンターへ取り付け、クランクと並行にセッティングします。その上で、下肢の骨格のクセに合わせて左右位置を微調整しましょう。上死点から下死点へスムーズな軌道で踏み込めるように感覚を大事にしながら微調整します。わずかな違和感も膝へストレスを与えてしまうので要注意です。この時、インドアトレーナー(固定ローラー)の上で微調整をすると、ペダリングの感覚に集中しやすく繰り返しの微調整もしやすいのでオススメです。
代表的なクリートには、シマノとLOOKがあります。これらには、それぞれ固定した時のフローティング角度別に3つのタイプがラインナップされています。完全に遊びがなく完全に固定されるタイプ、やや遊びがあるタイプ、ある程度動きがあるタイプです。完全固定のタイプは、パワーロスがない分、脚の動きに逃す部分がないので、シビアなセッティングが求められます。わずかなクリート位置の調整のズレが、膝を痛める原因になります。ビギナーやロングライド派ならば、ある程度動きがあるタイプをオススメします。
シマノのロード用クリート 黄色はフロート角が大きく、赤色は完全固定タイプ
LOOKのロード用クリート 赤色はフロート角が大きく、黒色は完全固定タイプ
シーンに合わせてビンディングのテンションを調整しよう
クリート位置が決まったところで、最後に、快適なビンディングペダルの調整方法を紹介します。シマノやLOOLのペダルは、クリートをキャッチする固定機構のテンションを調整できます(一部のモデルでは調整機構がないモデルもあります)。初心者やロングライドなどで立ち止まることが多いシーンでは、ビンディングシステムの固定力をやや緩めにセッティングして脱着しやすくすることをオススメします。一方で、一度ペダルへはめたら外す機会がないレースシーンでは、固定力を強めに調整しておくと良いでしょう。
ペダルのテンション調整ネジでクリートの固定力を調整できる
■記事執筆者:橋本謙司(はしもと・けんじ)
スポーツジャーナリスト。自転車専門誌やランニング専門誌の編集者を経て、現在は、主にライターとカメラマンとして活動。Mt.富士ヒルクライム(一般の部)での総合優勝など、全国各地のヒルクライムレースで優勝多数。愛称は「ハシケン」。ホームページ http://www.hashikenbase.com
ロングライド終盤でガス欠しない賢いエネルギー補給術
炭水化物と脂質を効果的に利用しよう
「ロードバイクに乗り始めてダイエットに成功した」という声はよく聞く。それだけ、長時間運動に適しているスポーツで、運動中は体内のエネルギーを消費しながら身体を動かしている。逆に言えば、体内にエネルギーがない状態では、うまく運動ができない。
ロングライドでスタミナ切れせず、最後まで楽しむために補給しよう
運動中のエネルギーには、炭水化物と脂質が主に使われ、血液や筋肉など身体を作るたんぱく質もエネルギーとして使われている。炭水化物と脂質は運動強度によってエネルギーとして使われる割合が変わり、サイクリングなど低強度運動時には脂肪が優先的に利用される。一方で、起伏の激しいコースなど高いパワーを発揮する高強度運動時には炭水化物が使われやすい。ダイエットに成功した人は、体内の脂肪を利用しやすい低強度運動を長時間続けた結果なのだ。
体内のグリコーゲンだけではエネルギー不足
さて、ここではロングライドやロードレースなど自転車イベントに参加する時に欠かせないエネルギー補給について紹介しよう。まず、炭水化物は、1gあたり4kcalのエネルギーで、脂質に比べてエネルギーとして素早く使える特徴がある。そして、摂取した炭水化物は、体内の筋肉と肝臓に蓄えられる。これをグリコーゲンと呼ぶ。よくロングライドなどの終盤でエネルギー切れになってフラフラしてしまうのは、このグリコーゲンが枯渇してしまうためだ。自転車イベントの途中でのエネルギー補給が欠かせないのは、体内に蓄えられるグリコーゲン量に限りがあるためだ。
一般成人男性の体内のグリコーゲン量は、筋肉に約300g、肝臓に約100g。合計約400gなので、炭水化物1gあたり4kcalから計算すると、運動前に体内に蓄えられるエネルギー量は約1600kcalほどになる。イベント前夜などに炭水化物を積極的に摂取(カーボローディング)するのは、体内のグリコーゲン量を満タンにすることが目的だ。計算上、1600kcal以上摂取した分は余剰カロリーとして脂肪などに変換されていってしまうので摂取しすぎも良くない。
もう一つのエネルギー源である脂肪は1gあたり9kcalで、体脂肪1kgあたり7200kcalの大きなエネルギーを持っている。低強度運動中は積極的に利用されるため、ロングライドなどでは強度を上げすぎず走ることで有効利用できる。
コースや走り方から判断して不足分のカロリーを補給
運動パフォーマンスの観点から重要なポイントは、体内のグリコーゲンは、使われやすい反面枯渇してしまうと、どんなに脂質のエネルギー源があっても運動パフォーマンスが低下してしまう点だ。ロングライドでスタミナ切れを起こさないようにするためは、グリコーゲンを枯渇させないようにすることが大切だ。
例えば、100kmのロングライドでは、およそ2400kcalを消費する(体型や走り方によって変化)ため、体内のグリコーゲンだけでは足りない。不足分のおよそ800kcal(2400kcal-1600kcal =800kcal)は補給食から摂取する必要があるのだ。エイドステーションを積極的に利用し、補給は最低1時間おきに小まめに摂取するように心がけたい。
ロングライドではエイドステーションを積極的に利用したい
ちなみに、参加するイベントのコースによって、グリコーゲン消費量は変化する点にも注目したい。平坦基調のロングライドよりも、起伏がある山岳中心のグランフォンドの方がグリコーゲンの消費量は増えるため、より計画的な補給が大切だ。強度が高くエネルギー消費が激しいロードレースでは、エネルギージェルなどの補給食の携帯が必須と言える。
運動強度が高いロードレースでは計画的な補給が欠かせない
吸収率の高い専用のエナジージェルを活用したい
運動中に利用されるエネルギーについて知ると、補給食の重要性も理解しやすい。参加するイベントの種類、その時の走り方やコースプロフィールに合わせた最適な補給を心がけたい。
■記事執筆者:橋本謙司(はしもと・けんじ)
スポーツジャーナリスト。自転車専門誌やランニング専門誌の編集者を経て、現在は、主にライターとカメラマンとして活動。Mt.富士ヒルクライム(一般の部)での総合優勝など、全国各地のヒルクライムレースで優勝多数。愛称は「ハシケン」。ホームページ http://www.hashikenbase.com
走るフィールドが広がる輪行のススメ
自由が広がる魔法のスタイル
どこへでも自分のスタイルで走りに行ける。その自由さこそスポーツバイクの魅力だ。はじめの頃は、週末に近所をサイクリングするだけでも楽しいはず。でも、いつしか雑誌やウェブで紹介されているような絶景の中を走ってみたいという想いが大きくなっていくのではないだろうか。そんな憧れを実現してくれる“魔法”がある。輪行(りんこう)だ。
輪行とは、電車やバス、飛行機、船など、公共の乗り物に自転車を載せて移動する手段のことだ。つまり、輪行をすれば、自転車で走りにいくには遠すぎる場所へも気軽に行けるのだ。輪行では、一般の人も利用する公共交通機関を利用するため、いくつか守るべきスタイルとマナーがある。ここでは、輪行時に気をつけたいことと実際に輪行をスタイリッシュに楽しむためのコツを紹介しよう。
周囲にも自分にもストレスのない輪行の工夫を!
まず、もっとも身近な鉄道での輪行では、荷室へ入れるバスや飛行機とは違い、移動中は周囲の一般の乗客の邪魔にならないように気をつけることが第一だ。車両では、人の流れが少ない場所へ置くことが前提なので、先頭または最後尾車両の壁側がオススメだ。出入口に括りつける場合は、極力スペースを取らないようにハンドルの向きなどを工夫しよう。
新幹線など指定席が取れる場合は、各車両の最後尾座席を確保しておけば、座席のシートの裏側に輪行袋を収納できる。
筆者は、普段から電車で輪行する時には、ルートを検索して、乗り換え回数の少ないルートを選ぶようにしている。また、車内が混雑しやすい時間帯を避けてライドの計画を立てることもストレスのない輪行のポイントだ。
そのほか、駅で自転車を分解・組み立てるときには、お店の前やコインロッカーの目の前での作業は避けよう。大型荷物となる輪行では、周囲への気配りを忘れずにしたい。
バスや飛行機輪行時の注意点は !?
観光地へ直通バスが多く、運賃も比較的リーズナブルな高速バスでは、荷室に収納することになる。最近は多くのバス会社が輪行を受け入れているが、利用の際は事前に確認しておくとをオススメする。また、バスの荷室では輪行袋を横に寝かせる形になるため、フレームとホイールが干渉して傷がつかないように、フレームを保護する養生などを施しておくと安心だ。
最後に、飛行機での輪行だ。バイクはチェックイン時に預けることになる。運搬時の衝撃から愛車を保護するため、緩衝材付きのソフトケースや箱型のハードケースまで、様々なスタイルのモデルが展開されている。ソフトケースは、コンパクトなサイズに収納できるので、運搬時の負担を軽減しやすい。一方、ハードケースは外部からの衝撃には強いため安心だ。ただし、箱の中でバラしたバイクが動かないように固定しておくことが大切だ。バイクのパーツ同士がぶつかり合って損傷しないように気をつけたい。また、ハードケースを持って空港まで移動する際は、キャスター(車輪)付きのハードケースがオススメだ。電車の乗り換えや空港内でのスムーズな移動には欠かせない。もっとも、事前に空港へ宅急便を利用して運搬しておく方法もある。
空港でのチェックイン時には、タイヤの空気を抜いていくことが約束だ。外気温の変化なおで破裂の恐れがあるためだ。また、CO2インフレター(携帯用の空気充填アイテム)や電動コンポーネントのバッテリーも入れることはできないので注意。バッテリーは取り外して手荷物として機内持ち込みにしよう。
CO2インフレターは1本容量50ml未満は4本まで機内持ち込み・預けが可能、電動式コンポーネントのバッテリーは手荷物として機内持ち込み可能
飛行機での輪行ではサイズや重量も規定がある。空港各社で規定と超過料金が異なるので、利用の際は事前に調べておこう。初心者にとって飛行機輪行はハードルが高く感じるかもしれないが、島や海外サイクリングなど世界が広がるので、ぜひチャレンジしてほしい。
■記事執筆者:橋本謙司(はしもと・けんじ)
スポーツジャーナリスト。自転車専門誌やランニング専門誌の編集者を経て、現在は、主にライターとカメラマンとして活動。Mt.富士ヒルクライム(一般の部)での総合優勝など、全国各地のヒルクライムレースで優勝多数。愛称は「ハシケン」。ホームページ http://www.hashikenbase.com
梅雨を快適に走るためのノウハウ
梅雨でも対策次第では快適
今年も新緑が気持ちよい自転車シーズンが始まったかと思ったら、日本列島は雨の多い梅雨の時期に突入。これから梅雨明けまでの約1ヶ月は、天気と相談しながら自転車を楽しむ時期の始まりだ。そんな梅雨のシーズンでも、雨対策の装備や走り方の工夫次第では、梅雨でも快適にライドを楽しむことができる! ここでは、雨天時でも快適性をキープできるウエアをはじめとするアイテムやあると便利なアイテム、そして万一の時に使える実戦対策までを紹介します。
身体の濡れを防ぎ体温低下を防ごう
カラッと晴れた時期ならば、ジャージとショーツの軽装でも快適に走れるだろう。一方で雨天時のライドでは、雨対策をしなければ快適に走ることはできない。雨天時のオススメのウエアリングはどのようなものだろうか。まず、肌に触れているジャージやソックスが濡れてしまうと、急に快適度が低下してしまう。それだけでなく、梅雨の時期でも山などの高地では急激な体温低下も招いしてしまうので注意が必要だ。
雨天時の基本スタイルは、ジャージの上にレインウエアを着用する。専用のレインウエアは、体内の熱を発散するベンチレーション機構が付いており、防水効果だけでなく蒸れも防いでくれる。また、乗車時にシワができにくく身体にフィットする立体裁断で設計されていることも多く、ライディング中のウエアのバタつきを防いでくれる効果もある。さらに、薄手のナイロン製素材がコンパクトなりジャージのポケットへの携行性にも優れる。
雨天時には、身体の末梢部が冷えやすいので手先や足先のケアも大切だ。通気性に優れる薄手のグローブではなく、ヒルクライムの下りなどでは厚手の冬向けのグローブも活用できる。防風・撥水加工が施された素材が雨の侵入を防ぎ、保温性を高めてくれる。足先には、ナイロン素材のシューズカバーがオススメだ。シューズ内部への雨の侵入を防ぐことができる。ソックスが濡れてしまうと、スレやマメなどの足トラブルを引き起こしやすくなるので注意したい。
レインウエア、防寒グローブとシューズカバーは雨天時の必須アイテム
視界の確保と快適バイク装備
このほか、走行中に雨によって視界が遮られることがないようにアイテムを用意しよう。サイクルキャップは、頭部からの雨の流入を食い止めてくれる。そして、キャップのツバが前面からの水滴の落下を防いでくれる。また、雨粒の目への侵入を防ぐためにはアイウエアも欠かせない。
雨天時の視界確保にはサイクルキャップとアイウエアがオススメ
雨天時のバイクの装備には、タイヤの泥はねを防いでくれるフェンダーがオススメだ。シートポストなどに固定するタイプから折りたたんで携帯できる簡易的なものまでラインナップは豊富だ。また、グリップが効き、パンクのリスクを防いでくれるウエットコンディションに強いタイヤの選択も重要だ。
ビニール袋とゴム手袋が役に立つ
ここまで紹介してきた雨対策のウエアとバイク装備が揃っていれば梅雨のライドでも快適性を約束できる。でも、時には雨対策を忘れしまったなんて言うこともあるだろう。そんな時に役立つ応急処置を紹介したい。
突然の雨に降られ、シューズカバーもない場合は、コンビニなどで入手可能なゴミ袋を活用しよう。まずソックスを脱ぎ、素足にゴミ袋をかぶせてからソックスを履く。これで、最悪シューズやソックスが濡れてしまっても足自体が濡れることがなく、足を冷えから守ってくれる。同じく、手先も素手に防水効果のあるゴム製の手袋をはめた上にグローブをしよう。メンテナンス用のゴム製の手袋がおすすめだ。耐久性が高く、フィット性も高い優れものだ。
エマージェンシーとしてビニール袋やゴムグローブが役に立つ
ライド後の最低限のメンテナンスが大切
雨の中でのライドを終えたら、愛車のメンテナンスも忘れずにしてあげよう。ライド後は、チェーンの油が落ちてしまうので、ライド後に注油したい。チェーンやスプロケットのギヤの水気を取りしっかりと油を挿し、大切な愛車を錆びから守ろう。このほか、ライトやサイクルコンピューターなどのアイテムへの水の侵入がないこともチェックしたい。
最低限の雨天対策さえできれば雨の中でのライドも快適だ。万が一の雨天対策とライド後の最低限のメンテナンスを実践して、今年の梅雨シーズンは積極的にライドへ出かけよう!
■記事執筆者:橋本謙司(はしもと・けんじ)
スポーツジャーナリスト。自転車専門誌やランニング専門誌の編集者を経て、現在は、主にライターとカメラマンとして活動。Mt.富士ヒルクライム(一般の部)での総合優勝など、全国各地のヒルクライムレースで優勝多数。愛称は「ハシケン」。ホームページ http://www.hashikenbase.com
スムーズでカッコイイ 下りの安全な走り方のポイント
コーナリングに自信を持ちたい
峠などの下り坂を高速で駆け下りている時の爽快感は、ロードバイクの魅力のひとつですね。今回は、カッコイイ高速ダウンヒルを習得しましょう。カッコイイと言っても、どれだけスピードを出せるかというものではなく、安定したフォームでコーナーをスムーズに走るためのスキルを学びます。今年は、コーナーリングに自信をもって走れるようになりましょう。
基本スキルを確実に行えばコーナーリングは安定する
直線的な下りでも、コーナーリング中の下りでも、高速走行時の共通点は低重心化です。エンデューロレースなどでは下ハンドルを握り極力低い姿勢をとりますが、ロングライドの下りでも、少しだけ姿勢を前傾させ頭の位置を下げるだけで、安定感が増します。
加えて、コーナーリング中には、走りながら重心位置を微調整しながら走る必要があります。この時、バイクの上で、上体を少し倒すだけで、バイクは旋回をしてくれます。ポイントは、ハンドルを切る意識ではなく、あくまで上体を少し倒すことで生まれる重心移動でコーナーを曲がることです。
コーナー時の遠心力と重力の関係
さて、ビギナーの多くが失敗しやすいコーナリング事例が、コーナーを曲がり切れずに慌ててブレーキをかけてしまうケースです。過去にヒヤッとした経験をした方も少なくないのではないでしょうか。
この原因は、コーナー進入時のスピードが高すぎることに尽きます。コーナーの曲がり(アール)に対して、曲がり切れるスピードとタイヤのグリップ力の限界があるので、曲がり切れないとコーナーの途中でブレーキをかけて減速をしいられます。コーナリング中のブレーキほどグリップを失いやすいシーンはありません。基本的にコーナリング中は、ブレーキをかけず、路面とバイクのグリップ力を発揮させることが大事なのです。
安定感がありスムーズなコーナーリングをするためには、1「コーナー進入時までに速度をしっかりと減速しておく」、2「コーナー旋回中は重心移動で曲がり、ブレーキはかけない」、3「バイクが十分に立ち上がったタイミングで踏み出し、コーナー出口では加速する」。この3つが下りコーナーの基本スキルです。
コーナー時の3つの基本スキル
進入スピードよりも出口でのスピードが速まるように意識すると、スムーズで安定感のあるコーナリングをできるようになるでしょう。
タイヤの空気圧を探してみよう
高速域でバイクを倒して、グリップを生みながら曲がるためには、タイヤのグリップ力を高めてあげることも大切です。まずは、タイヤの空気圧をチェックしましょう。タイヤはモデルによって適正空気圧(6.0~9.0barなど)が指定されています。タイヤの側面に記載されていることがほとんどです。まずは、指定空気圧の下限にセットして、試しにコーナーを走ってみましょう。その後、空気圧を1回あたり0.2~0.3気圧ほど上げながら、同じコーナーを走りグリップ力の差を確認しましょう。この作業を行うだけで、タイヤの抵抗を感じることなく、グリップ力が最も発揮される空気圧を見つけられるでしょう。ちなみに、ベストな空気圧は路面状況やライダーの体格によって変化するので、走行条件によって調整することが理想です。
タイヤ空気圧を調整してグリップを高めつつ、コーナリングの基本スキルを確実に行うことで、カッコイイ安心感のあるコーナリングが身につきます。今度の週末、ロングライドに出かけた時に、コーナリングの基本スキルを思い出しながら走ってみてくださいね。
■記事執筆者:橋本謙司(はしもと・けんじ)
スポーツジャーナリスト。自転車専門誌やランニング専門誌の編集者を経て、現在は、主にライターとカメラマンとして活動。Mt.富士ヒルクライム(一般の部)での総合優勝など、全国各地のヒルクライムレースで優勝多数。愛称は「ハシケン」。ホームページ http://www.hashikenbase.com
ウエアリング術(春夏編)
専用ウエアはよく考えられている
ロードバイクを手に入れて、これから本格的に自転車ライフを送ろうと考えているならば、ロードバイクに乗る時のウエアは、サイクリング専用モデルがおすすめです。サイクルジャージとも呼ばれていますが、主な特徴としては、吸汗速乾性に優れる素材や、素材の伸縮性を駆使した立体縫製を採用して作られています。また、自転車は、サドルに座り続けるため、ジャージにはお尻の部分をカバーするようにパッドと呼ばれるクッション材が縫い合わせてあり、長時間乗っていても圧を分散し、ストレスを軽減してくれる工夫がなされています。また、背中にはポケットが付いていて、長時間ライドに必要な補給食や着替えなどを携帯しておくことができます。
汗べたを防ぎ、多様なシーンを想定する
さて、ここからが今回のテーマの本題です。夏シーズンなら半袖ジャージに膝上のパンツだけで十分と思っていませんか。まず、汗の発汗量が高まる夏場は、ジャージ一枚だけでは、吸汗速乾が追いつかず、長時間走っているとジャージが汗で濡れてしまいます。そのまま走り続けていると、カラダが冷えてしまいます。そこで、おすすめのアイテムがインナーウエアです。吸汗速乾性に特化して作られている上に、快適な肌さわりも考慮したものが多いため、着用するだけで汗を逃がして涼しい状態をキープできます。
インナーウエアイメージ
また、ロングライドでは、上り坂があり、下り坂があり、海岸線や河川敷では風に吹かれることもあるでしょう。このようなシーンでは、体温調整が可能なアイテムをいくつか用意しておくと快適にライドを楽しめます。簡単に着脱が可能なアームカバーとレッグカバーは、夏場のロングライドで重宝します。また、防風効果のあるウィンドブレーカーや、もしもの雨でもジャージを濡らさないレインウエアも用意しておけば安心です。ともに、薄手素材を採用し、軽量でコンパクト設計なのでかさばりません。
防風効果のあるウィンドブレーカー
サイクルジャージは、紫外線対策にも効果的です。年間を通して紫外線量が多いのは5月です。太陽の下でほんの少し走るだけで日焼けしてしまいます。こんな時は、UVプロテクト効果のある素材を採用するアイテムを選ぶことで日焼けを防げます。ライド中に日焼けをしやすい手と腕は、長指グローブとアームカバーで対策することをおすすめします。
半袖ジャージ着用イメージ(アームカバー・グローブ)
ツール・ド・フランスで見た防寒対策
最後に、お腹の冷えを防ぐちょっとした裏ワザを紹介。夏場のツール・ド・フランスの峠の下りに入る選手たちが、沿道から新聞紙を受け取り、お腹の中に入れて、長い下りに備えているシーンを目撃したことがありました。万が一の時に使える裏ワザとして覚えておくと使えるかもしれません。
ツールの写真
■記事執筆者:橋本謙司(はしもと・けんじ)
スポーツジャーナリスト。自転車専門誌やランニング専門誌の編集者を経て、現在は、主にライターとカメラマンとして活動。Mt.富士ヒルクライム(一般の部)での総合優勝など、全国各地のヒルクライムレースで優勝多数。愛称は「ハシケン」。ホームページ http://www.hashikenbase.com
初心者のコンポーネント!? 105を堪能しよう!
世界のシマノが作るコンポーネント
あなたの愛車についているコンポーネントのモデルは何でしょうか? コンポーネントとは、文字通り、構成要素を意味する言葉で、自転車ではフレームに組み付けていく構成パーツの総称です。自転車コンポーネントの中で、世界最大のシェアを誇るブランドが、日本のシマノです。大阪府堺市に本社を構え、シティサイクルからレース機材に至るまで幅広い自転車部品を製造しています。
ロードのコンポーネントのうち、スポーツバイクのカテゴリーは、明確にグレードが分かれています。ロードバイクの完成車価格が20万円前後ほどのバイクに付いてくるコンポの代表格が105です。正式呼称でイチマルゴと呼びます。初めて買ったロードバイクに付いていることがもっとも多いはずです。
上位3グレードは11段変速が特長
シマノ・ロードコンポーネント | 変速段数 |
---|---|
デュラエース | 11 |
アルテグラ | |
105 | |
ティアグラ | 10 |
ソラ | 9 |
クラリス | 8 |
トップグレードは、シマノの技術の粋を結集したデュラエースです。ツール・ド・フランスで数多くのトッププロチームが使用し、極限のレース環境でのパフォーマンスを約束します。セカンドグレードがアルテグラです。そして、105が3番目に当たります。どのモデルも、レースでのパフォーマンスを追求して開発されたシマノロードコンポーネントの上位3モデルです。その下位には、ティアグラ、ソラ、クラリス、ターニーと展開されています。
各グレードの特長は、上位グレードになるほど、軽さや剛性、耐久性が高まる傾向にあります。「アマチュアでレースを目指すなら105までがオススメ」と言われることがありますが、この理由は、変速段数がどれもリア11段であり、シビアなレースシーンで求められる素早く確実なシフト操作を実現する性能を有しているためです。ティアグラは10段変速、ソラは9段変速、クラリスは8段変速です。15年ほど前までは9段変速が最高峰コンポーネントであった時代なので、贅沢な時代になったものです。
ホビーレースなら105で十分満足できる
シマノではグレードが異なったとしても、組み合わせが可能なコンポーネントが多くあります。これを互換性と呼びますが、デュラエース、アルテグラ、105は基本的に互換性があるため、レースを目指してより軽くて剛性の高いモデルを選ぼうとした場合、105を選んでおけばパーツごとの計画的なグレードアップが可能です。
プロショップに足を運び、入門用カーボンモデルを見ると、その多くに105が搭載されています。スタッフからも「初心者はまず105から」と言われることがあると思いますが、105はプロ仕様のテクノロジーを色濃く継承するレースコンポーネントです。決して入門グレードではなく、アマチュアレースでの活躍を約束する素晴らしいコンポーネントと断言できます。私も、初めて買ったロードには105が搭載されていました(当時は9段)。そのバイクで、乗鞍をはじめとするヒルクライムレースの年代別で優勝できました。アマチュアレースはもちろん、ロングライドを楽しむことが目的であるなら、105で十分と言えるでしょう。
もちろん、プロスペックのデュラエースやアルテグラに憧れを抱くのは当然ですが、まずは愛車に搭載されている105のスゴさを堪能しましょう。シフティングのスムーズさ、上位グレードに引けを取らない質感など見事です。
愛車に付いているパーツのことを知り、好きになれば、ロードバイクがますます好きになること間違いないでしょう。
105の名の由来とは?
最後に、各グレード名の由来についての豆知識を紹介します。1971年に誕生したデュラエースの名は、素材のジュラルミン(Duralumin)と耐久性を意味するデュラビリティ(Durability)に、世界一のコンポという願いを込めた「エース」を組み合わせた造語です。1976年に誕生のアルテグラは、Ultimate(究極)+Integrate(統合)を意味するコンポーネントです。1982年に誕生した105については、当時のダブルレバーSL-A105の型番を継承し、現在では105というグレード名になっています。
■記事執筆者:橋本謙司(はしもと・けんじ)
スポーツジャーナリスト。自転車専門誌やランニング専門誌の編集者を経て、現在は、主にライターとカメラマンとして活動。Mt.富士ヒルクライム(一般の部)での総合優勝など、全国各地のヒルクライムレースで優勝多数。愛称は「ハシケン」。ホームページ http://www.hashikenbase.com
「踏む」から「回す」へのペダリング意識改革
「踏む」ではなく「回す」
ペダリングをすることを「ペダルを踏む」という言葉で表現しませんか。確かに、脚を上から下へと動きながら加速しているので、間違った表現ではありません。そもそも、ペダルに足をかけただけで、無意識のうちに自転車を進めている人がほとんどかもしれません。でも、スポーツバイクに乗り出したら、ロングライドやロードレースにチャレンジする時がやってきます。より遠くへ! より速く! そのためには効率的にペダルに力を加えて、自転車を加速させるペダリングスキルを身につけることが大切なのです。
まずは、自転車の構造を簡単に理解しましょう。自転車は、ペダルの付いたクランクを回転させることで加速します。このクランクに大きな力をかけて素早く回せば回すほど、自転車の推進力が増します。そう聞いて勘違いしがちなのが、ペダルをガムシャラに力強く踏み込んでしまうことです。しかし、それでは効率的ではありません。ボールを蹴る時のように、大きな力でキックをすれば遠くに飛んでいくような単純なものではないのです。ペダルを踏むだけのペダリングでは、「頑張っている感」があるだけで効率的なペダリングとは言えません。大切なことは、「踏む」ではなく「回す」という意識に変えながら、クランク位置3時のタイミングで最大の力を加えることです。
ロスなく力を伝えるためには?
ここで力の方向を示す2つの言葉を学びましょう。接線方向と法線方向です。接線方向とは、クランクの回転軌道に沿って発揮される力の向きです。一方で、法線方向とは、円の中心から外側に向かって(垂直方向)発揮される力の向きです。ロスなく力を伝えるためには、接線方向への入力が大切です。
そのことを理解した上で、身体の構造的に力を最も加えやすいクランクの3時の位置で最大出力を発揮させます。そして、3時以外のタイミングでは力を抜いてあげてクランクの軌道に合わせてスムーズに回します。
試しに力の加え方を意識しながらペダルを回してみましょう。ただ漠然と踏み込んでいた時とは違うスムーズな力の伝達を実感できるはずです。少し意識を変えるだけで、出力(パワー)は向上します。パワーメーターがあれば、出力の変化を数値で実感しながらリアルタイムにペダリングスキルを向上させることもできます。
■記事執筆者:橋本謙司(はしもと・けんじ)
スポーツジャーナリスト。自転車専門誌やランニング専門誌の編集者を経て、現在は、主にライターとカメラマンとして活動。Mt.富士ヒルクライム(一般の部)での総合優勝など、全国各地のヒルクライムレースで優勝多数。愛称は「ハシケン」。ホームページ http://www.hashikenbase.com
楽しく走るためのフレームサイズとジオメトリ
フレームサイズ
街のホームセンターなどで売られている生活の足としての自転車。いわゆるママチャリを選ぶ時、多くの人が地面に足が届くことを目安にしてザックリと決めています。ちなみに、26インチや27インチなどの展開があります。
一方で、ロードバイクのサイズは細かく用意されています。ひとつのモデルに対して5サイズ前後、中には10サイズ近くもあります。そもそも、ママチャリのサイズはホイールの大小による区分けですが、ロードバイクの場合は、フレームサイズがミリ単位の違いで展開されています。このように、ロードバイクは、速さや快適性を求める上で、その人の身体にピッタリな適正サイズを選ぶことが重要であることがわかります。
ジオメトリー
さらに、フレームのサイズを、より細かく示した設計図のようなものをジオメトリーと呼びます。フレームを構成するチューブの長さや角度の違いによって、走りの傾向を知ることができます。おおよそ、そのバイクの特長を知ることができるのです。
例えば、ヘッドチューブ長が長ければハンドル位置が高くなるので、上体が起き気味の楽なポジションをキープしやすくなります。ロングライド向きと言えます。逆に、より速さを追求して空気抵抗を減らすエアロポジションを取りやすいのは、ヘッドチューブ長が短いモデルです。こちらはレース志向モデルと言えるでしょう。また、バイクの操縦性に多大な影響を与えるフロントフォークの設計は、トレール量やヘッドアングルといった数値が重要です。このほか、前後輪それぞれの間の距離を示すホイールベースは、長いと直進安定性が高まり、短いと機敏な動きが得意になります。
ちなみに、前述の細かいサイズ展開は、ジオメトリーの中のトップチューブ長をベースに設定していることが多いです。適正なフレーム選びのポイントになる大切な数値です。
フレームサイズとジオメトリーの選び方
ロードバイクは、設計ひとつで運動性能が大きく変化します。メーカーもユーザーの目的に合わせて味付けの異なる複数のラインナップを用意しています。深い前傾フォームを取りやすく、機敏な運動性能を特長とするレーシングバイク。また、直進安定性が高く、長時間のライドでも身体に負荷がかかりにくいフォームを作りやすいエンデュランスモデルなど。
自身の身体にフィットした適正サイズを選ぶことと、走りのシーンに合わせたジオメトリーを選ぶことで、その後の楽しいロードバイクライフへと導いてくれるでしょう。
■記事執筆者:橋本謙司(はしもと・けんじ)
スポーツジャーナリスト。自転車専門誌やランニング専門誌の編集者を経て、現在は、主にライターとカメラマンとして活動。Mt.富士ヒルクライム(一般の部)での総合優勝など、全国各地のヒルクライムレースで優勝多数。愛称は「ハシケン」。ホームページ http://www.hashikenbase.com
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